ボルテージフォロワを追加しても阻止帯域でのリークが十分に低減されない場合には、使用するオペアンプを別のものに代えて最適なものを探すのもよい。オペアンプのコモンモードゲインは、応答に大きな影響を及ぼす可能性がある。従って、CMRR(Common Mode Rejection Ratio:同相信号除去比)の高いオペアンプを使用する必要がある。
また、オペアンプA1の出力と同A2の入力の間に高周波用の受動フィルタを加えることにより、阻止帯域の広い範囲においてリークを大幅に低減できることがある。
図6の例では、ローパスフィルタを2つ直列に接続している。これらのフィルタは、サレンキー型フィルタ本体のブレークポイントからは十分に離れた位置に減衰特性が位置するようなものとし、ブレークポイントと伝達関数の形状に影響を与えないようにする必要がある。ブレークポイントから2桁離れた位置になるよう2個の抵抗と2個のコンデンサの値を設定すれば、サレンキー型フィルタの周波数応答に影響を与えることはない。
また、抵抗の値は、コンデンサによるリンギングが生じないように設定する。200Ω〜1kΩの抵抗を使えば、コンデンサによるリンギングや発振を防ぐことができる。
要件の厳しい用途においては、サレンキー型フィルタに用いるオペアンプとボルテージフォロワに用いるオペアンプとして、個別パッケージのものを選択するとよい。これにより、パッケージ内でのクロストークによって信号が結合する可能性のあるパスを排除することができる。なお、一般的に、このクロストークの影響は周波数の高い領域で大きくなる。
本稿で紹介した手法を、実際のハードウエアで検証する場合の流れを紹介しておく。フィルタ構成と使用する部品の値は、米National Semiconductor社の「WEBENCH」などのフィルタ設計ツールを用いることにより決定する。オペアンプの品番と各部品の値が確定すれば、実際にフィルタを構成可能である。図7は、ボルテージフォロワのオペアンプとして帯域幅が55MHzの電圧帰還型アンプ「LMH6645」を用いた場合の具体的な回路例である。
この回路を使って作成した評価ボードと、従来のVCVS構成の回路を使った評価ボードのそれぞれについて評価を行った結果を図8に示した。この結果から、ボルテージフォロワを追加したサレンキー型フィルタでは、阻止帯域の特性が1MHzを超える部分において大きく改善されていることがわかる。なお、フィルタのカットオフ周波数は10kHzであり、計測には米Agilent Technologies社のシグナルアナライザ「3562」を用いた。
ここまでに説明したとおり、サレンキー型ローパスフィルタのピーキングに対しては、ボルテージフォロワの追加が有効な対策となる。
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