三菱重工業は2009年8月、リチウムイオン電池事業に本格参入する方針を明らかにした。まず、量産のための実証工場を、2010年秋までに長崎造船所(長崎県長崎市)内に建設する。生産能力は年産6万6000kWh(同社の中型電池換算で約40万セル)。2011年には、本格的な量産工場の建設も計画している。また、同年10月に、全社横断的な組織であるリチウム二次電池事業化推進室を立ち上げた。
同社は九州電力との共同研究を基に、定格容量が165Whの車両向け中型電池(写真4)と、定格容量が350Whの定置用大型電池を開発し、すでにサンプル出荷を開始している。まず、自社製のハイブリッドフォークリフトや風力発電設備に搭載し、その後、電気バスや路面電車など、車載向けにも展開していく方針である。
IHIと米A123Systems社は2009年11月、日本市場におけるA123Systems社のリチウムイオン電池の事業展開について提携を結んだことを発表した。IHIは、2011年を目処にリチウムイオン電池事業をエネルギー事業の中核とするべく、2009年11月にリチウムイオン電池プロジェクト室を設立した。また、国内の自動車/建機/住宅/産業機械メーカーなどへの提案活動も開始しているという。
A123Systems社のリチウムイオン電池は、正極材料にリン酸鉄リチウムを採用しており、高温時の充放電性能や安全性が高いことで知られている。すでに、米Chrysler社などの電動自動車への採用も決定している。
村田製作所は2009年11月、ラミネート型のリチウムイオン2次電池のサンプル出荷を開始した。同社は、各種用途向けに、小型、中型、大型の電池セルを開発してきた。今回、サンプル出荷を開始したのは、電動自転車、エンジンのスタータ、複写機など向けの中型セルである(写真5)。
中型セルは、サイズが86mm×100mm×5mmで、容量は2Ah。最大放電レートは、20C(1Cは電池の全容量を1時間で放電させるだけの電流量)である。正極材料については、パソコンや携帯電話機のリチウムイオン電池に用いられているコバルト酸リチウム以外の材料を採用した。「当社がコンデンサ開発などで培ってきたセラミック技術を応用すれば、用途に合わせて性能とコストを両立した正極材料を選択することができる」(同社)という。
さらに、パソコンや携帯電話機向けのリチウムイオン電池の大手メーカーであるソニーも、エコカー向けなどの大容量リチウムイオン電池市場に参入する方針を明らかにしている。
(朴 尚洙、村尾 麻悠子)
電気自動車やプラグインハイブリッド車などの普及に向けた課題として挙げられるのが、リチウムイオン電池のコスト低減と充電インフラの整備である。車載リチウムイオン電池と同様に、充電インフラへの事業参入も積極的に進められている。 パナソニック電工は2009年9月、200Vコンセントを搭載する充電スタンド「ELSEEV」を発表した(写真A)。主に、公共施設や企業の駐車場に設置して使用することを想定している。2010年6月に発売する予定である。
ELSEEVは、初期導入価格が20万円からと、低価格であることを最大の特徴とする。すでに、200Vコンセントを搭載する充電スタンドとしては、豊田自動織機と日東工業との共同開発品や、日本ユニシスの製品が発表されている。これらの初期導入価格が40万〜50万円であるのに対して、ELSEEVはその半額以下となっている。
パナソニック電工は、「電気自動車を早期に普及させるためには、まず充電スタンドを建ててもらうことが必要だと考えた。他社の充電スタンドは、当初から課金認証機能や通信機能などを搭載して販売している。それに対し、ELSEEVは充電にかかわる機能以外を省くことで初期導入価格を低減した」としている。また、ELSEEVの基本仕様では、コンセントは1個だけだが、約5万円のコンセントユニットを追加することにより、合計4個までコンセントを装備できる。「このように、必要があれば後から機能を追加することが可能な設計にしてある。なお、課金認証機能などに必要なユニットの開発も検討している」(同社)という。
ELSEEVを手掛ける配管機材事業部は、電線をはじめ電線経路に関連する製品を扱っている。同事業部は、「充電スタンド事業に参入するというよりも、公共施設向けの商材が1つ増えたというイメージだ」としている。
(朴 尚洙)
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