本稿では、低コストのスイッチング方式DC-DCコンバータに利用可能なランプ信号の発生回路を紹介する。電源電圧としては直流の5V〜32Vが使用でき、出力ランプ信号の振幅は0.3V〜1Vの範囲に設定できる。また、最小オフ時間の設定が可能であり、デューティサイクルの制限を要する磁気部品を使用する場合には、最大デューティサイクルを50%とすることができる。
図1に示したランプ信号の発生回路は、デュアルコンパレータ「LM393」が内蔵する2つのコンパレータのうち1つを使用している。残りの1つは、後述するDC-DCコンバータのPWM(パルス幅変調)信号の生成に利用する。ランプ信号の振幅と周波数は基準電圧によって決まるのだが、基準電圧源としては、一般的な赤色LEDを利用すればよい。つまり、その順方向電圧が室内温度範囲において約1.7Vとほぼ一定であることを利用する。抵抗R1と同R2の比率により、基準電圧に対するランプ信号の振幅の比率が決まり、R1、R2およびコンデンサC1によって最小オフ時間が決まる。そして、抵抗R3とコンデンサC2との時定数により、周波数が決まる。ただし、この周波数にはR1、R2およびC1も影響を及ぼすので注意を要する。表1に、いくつかの定数設定の例を示しておく。
図2の回路は、図1のランプ信号発生回路を利用して構成した70V出力の昇圧型DC-DCコンバータである。図2の回路では、330μHのコイルを使用しているが、この定数は必要なPWM周波数に応じて変更する。
この回路は、負荷変動に対する応答が低速である。これについては、抵抗R5とコンデンサC3で決まる時定数により調整可能だ。注意すべき点は、抵抗R9と同R5の分圧回路が、コンパレータIC1Bの−端子に加わる電圧の最低レベルを+端子の最低電圧レベルより上になるようにしていることである。
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