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» 2010年10月01日 00時00分 公開

マイコンの消費電力を理解するローパワーのシステムを実現するために(2/2 ページ)

[Mike Salas (米Silicon Laboratories社),EDN]
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スタンバイ電力

 最大のエネルギー効率を実現するには、各マイコンが可能な限り低い電圧、短い時間、少ない消費電流で処理を実行し、ほとんどの期間は消費電力の少ないスタンバイ状態になるようにする必要がある。一部の用途では、スタンバイ状態における電流が消費電力の総量を左右する最大のパラメータとなる。ここで見落としてはならないことは、マイコンが達成可能な最小のスタンバイ電力を決める最大の要因がリーク電流であるという事実だ。例えば、入力リーク電流の仕様が100nAで、入力端子が20本あるデバイスでは、スタンバイ状態において最大2μAもの電流を消費する可能性がある。

 リーク電流に影響を与える要因はいくつか存在する。その中でも最も重要なのは製造プロセスである。0.35μmあるいは0.25μm程度のプロセス技術を使用して、リークに起因するスタンバイ電力を低減するベンダーもある。しかし、この方法では、アクティブ電力が大きくなってしまう。一方、0.18μm以下のプロセス技術を用いればアクティブ電力を低減することが可能だ。しかし、この場合はリーク電流が大きくなってしまう。

 この問題への対処法の1つは、使用するプロセス技術にかかわらず、リークを抑えて非常に少ないスタンバイ電力を実現する高度な電源管理機構をマイコンに実装することだ。0.25μm以下のプロセス技術を使用する場合、スタンバイ電力を最小にするには、デジタルコア部への供給電圧を低減する必要がある。デジタルコア部への供給電圧を下げれば、オフ状態にある間のリーク電流も小さくなり、スタンバイ電力が抑えられる。

 ただし、この場合、マイコンにはスタンバイ状態からアクティブ状態に移行する際、続きから処理を再開できるように、RAMに保持したデータとすべてのレジスタの状態を保持する仕組みを盛り込む必要がある。これについては、消費電流の少ないスタンバイ状態用のラッチバイアス機構か、リーク電流を抑えつつスタンバイ状態の前の情報を保持可能なリテンションラッチを使用すればよい。

 マイコンには、電源電圧の低下を検出する機能など、継続的に働く何らかの電源電圧監視機能も必要である。電源電圧が最小リテンション電圧以下になったらリセットするためだ。なお、このような電源管理用の回路、I/Oパッドセル、リアルタイムクロックなど、スタンバイ状態でも動作する回路ブロックについては、LDOレギュレータで降圧していない電圧で動作させる必要がある。

 設計者は、ほとんどのベンダーが何種類ものスタンバイ状態のオプションを用意していることも知っておかなければならない。しかも、ベンダーは製品スペック上で、絶対最小スリープモード電流の値を強調していることが多い。ここで言う絶対最小スリープモード電流とは、リアルタイムクロックと電圧低下検出機能が動作していない状態での消費電流のことである。さらには、メモリーの状態を保持せず、起動時にはリセットが必要なシャットダウンモードでの電流値を仕様として提示するベンダーもある。しかし、このモードは一般的には実用的なものではない。ほとんどの用途において、RAM/レジスタの状態を保持する必要があるからだ。そのため、このことを前提とした上で、次の各ケースについて比較するとよいだろう。各ケースとは、リアルタイムクロックと電圧低下検出機能をともに無効にした場合、リアルタイムクロックを無効にして電圧低下検出機能を有効にした場合、リアルタイムクロックと電圧低下検出機能をともに有効にした場合である。それぞれのスタンバイ電力について、同じ基準での比較を行うことが重要である。そうすれば、全体的なスタンバイ電力を正しく算出することができる。

状態遷移時の電力

 スタンバイ状態が存在するシステムは、マイコンを起動し、データの取得/処理に向けて準備を整える際に、かなりの電力を消費する可能性がある。用途によっては、マイコンがスタンバイ状態からアクティブ状態に遷移する際、データをフルに処理している場合と同等の電力を消費することもある。そのため、この状態遷移時の電力消費を抑えられるように設計されたマイコンを使うことが重要である。

 マイコンは、外部のトリガーイベントまたは内蔵タイマーによってスタンバイ状態を終了する。スタンバイ状態からの周期的な起動を最も柔軟性高く実現できるのは、リアルタイムクロックである。また、正確なタイミングを必要とする用途では外付けの水晶発振器を用いるとよい。高いタイミング精度を必要としない用途であれば、水晶発振器を使用する必要はない。周波数の低い内蔵発振器を用いて、リアルタイムクロックを動作させればよい。なお、高速なシステムクロックに対して、起動の遅い水晶発振器を使用してはならない。正確で起動の速いオンチップの発振器を使用するほうが適している。

 多くのマイコンは、周期的に起動し、オンチップのA-Dコンバータを用いて入力信号をサンプリングするという使い方となる。そのため、正しく測定が行えるように、デジタル回路を起動してアナログ回路のセトリングが完了するまでの十分な時間を確保することも重要である。アナログ回路の起動時の動作は、システムをアクティブ状態にしておかなければならない時間に大きな影響を与える可能性がある。例えば、外付けのデカップリングコンデンサを用いる電圧レギュレータは、セトリングにかなりの時間を要することがある。

 注意が必要なのは、デジタル回路の起動時間のみを仕様に示し、アナログ回路のセトリング時間を無視するベンダーも存在するという事実である。デジタル/アナログの両方の回路が起動するのに要する時間を調査し、スタンバイ状態からアクティブ状態への遷移時に消費される電力の値を正しく算出しなければならない。

その他の検討事項

 システムの消費電力をさらに削減するための方法はそのほかにも存在する。例えば、マイコンの中には、A-Dコンバータを搭載しない、命令クロックを低速にするといったかたちで機能/性能を削減し、1.8Vという低い電圧で動作できるようにしているものがある。このような製品であれば、消費電力を抑えつつ、2個の単3/単4型電池によって駆動する機器に使用することができる。だが、これよりももっと革新的な方法は、1個の電池を用い、その出力が0.9V程度まで落ち込んでも動作するようなシステムを設計することである。この方法を実現するには、電池の最小電圧(アルカリ電池の場合で0.9V)での動作が可能で高度に最適化されたDC-DCコンバータを用いる必要がある。

 消費電力を削減するもう1つの方法は、A-DコンバータやD-Aコンバータ、その他の周辺機能を内蔵する集積度の高いマイコンを使用することである。この場合、マイコン自身によって、これらの周辺機能を必要に応じて起動/停止するよう制御することができる。例えば、プロセッサコアがオフの状態でもアナログ信号の測定が可能なバーストモードを備える低消費電力のA-Dコンバータを搭載するマイコンも存在する。

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