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進化する組み込み向け計測技術(2/4 ページ)

» 2010年10月01日 00時00分 公開
[Rick Nelson,EDN]

■LeCroy社

 LeCroy社でプロダクトマーケティングマネジャを務めるDan Monopoli氏とWilliam Driver氏は、他分野の設計者に比べ、特に組み込みシステム分野の設計者が強く求める測定器の種類や機能について言及した。LeCroy社の顧客は、ESCに参加するグループと『DesignCon』に参加するグループの2つに分かれるという。Monopoli氏とDriver氏は共にESCに参加したが、ESCは、1GHz帯の製品を担当するMonopoli氏の領域に近い。一方、DesignConは1GHz〜6GHz帯の製品を担当するDriver氏の領域である。

 Monopoli氏によると、「ESCの参加者は、I2CやSPI(Serial Peripheral Interface)、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)信号を解読できる測定器を求めている」という。一方、DesignConの参加者は、USB 3.0やPCI Express Generation 3といった高速バスにおけるシグナルインテグリティの問題の解析が可能な広帯域のオシロスコープを求めている。DesignConの参加者には、新しいICの評価(あるいはその準備)を行っている技術者が多い。彼らは、新しいツールの初期ユーザーとなる可能性が高い技術者たちでもある。

 LeCroy社はESCで6GHz帯と30GHz帯のオシロスコープを展示し、製品ラインアップの充実をアピールした。ただ、Driver氏によると、同氏が担当する製品についてより、Monopoli氏が担当する製品に関する質問のほうが多かったという。Driver氏は、「ESCで行ったハイエンドの測定器の展示は、当社の測定器がオプションや機能、インターフェースの面で一貫していることを示す良い機会になった」とも述べている。

 Monopoli氏は、「2010年のESCの参加者は、帯域の広さやメモリーの深さよりも、むしろミックスドシグナル回路やI2C、SPI、そして車載用だけでなく幅広い分野で採用されるようになったCAN(Controller Area Network)バスといったさまざまなインターフェースに対応可能な測定機能を求めていた」と語った。当然、見込み顧客が望んでいるのは、こうした機能のすべてを、購入の承認が下りやすい割安な価格で手に入れることだ。さらにMonopoli氏は、「ある年のDesignConの最新技術は、その2〜3年後のESCの最新技術になる。なぜなら新技術は2〜3年たつと、組み込みシステムの用途で使用できるレベルまで価格が下がるからだ」と指摘した(別掲記事『ビジネス機会は“エッジデバイス”分野に』を参照)。

写真2LeCroy社の「ArbStudio」と「LogicStudio16」 写真2 LeCroy社の「ArbStudio」と「LogicStudio16」 ArbStudioのソフトウエアは、外部に接続したパソコン上で利用する(a)。(b)のLogicStudio16は、パソコンに接続して使用するタイプのロジックアナライザである。

 LeCroy社はESCにおいて、任意波形発生器(AWG:Arbitrary Waveform Generator)の「ArbStudio」を発表した。同製品を使えば、PWM(パルス幅変調)信号や125MHzの高速信号を生成することができる(写真2(a))。波形の生成については、制御用のソフトウエアインターフェースとしてナビゲーションツリーを用意することで、各出力チャンネルの設定が容易に行えるようになっている。

 ArbStudioシリーズには、4つのモデルがある。アナログ出力を2チャンネル備えた「1102」、同4チャンネルの「1104」、アナログ出力2チャンネルにロジック出力18チャンネルを備えた「1102D」、そしてアナログ4チャンネルとロジック36チャンネルの「1104D」である。Monopoli氏は後者の2モデルを“ミックスドシグナルオシロスコープのAWG版”と表現する。アナログ4チャンネルのモデルは、8ユニットまで接続可能な拡張ポートを備えている。4モデルはすべて、125MHzの帯域幅、1ギガサンプル/秒(GS/s)の最大サンプリングレート、チャンネル当たり2メガポイントのメモリー長、16ビットの分解能を持ち、任意波形発生(True Arbitrary)モードとDDS(Direct Digital Synthesis)モードの両方に対応する。ArbStudioのソフトウエアは、外部に接続したパソコン上で動作する。Monopoli氏は、「LeCroy社がArbStudioの発表の場としてESCを選んだ理由は、この製品の価格が5000米ドル以下で、組み込みシステムの評価/試験に適していたからだ」と説明した。同製品の価格は、2490米ドル〜4990米ドルである。

 このほか、LeCroy社はESCで、パソコンでロジックアナライザ機能を利用できるようにする「LogicStudio 16」を初公開した(写真2(b))。同製品は、サンプルレートが1GS/s、最大入力周波数が100MHzで、16チャンネルをサポートする。そのソフトウエアは、直感的に操作可能なユーザーインターフェースを提供し、パソコン上に動的に波形を表示することができる。デバッグ用ツールとしては、タイミング測定用カーソルやズーム/パン(平行移動)機能、重ね書き表示機能、過去に取り込んだデータを再現する履歴モードなどを搭載している。I2C、SPI、UARTのプロトコル解析機能を備えるほか、トリガーとして特定のバスアドレスまたはデータパケットを設定可能となっている。

 Monopoli氏によると、「LogicStudio 16の価格は990米ドルで、USBロジックアナライザの価格帯に収まっている」という。同製品の最大の利点は、LeCroy社のオシロスコープ「WaveJet」との通信機能を備えていることだ。この機能により、ミックスドシグナルのデバッグ環境にパソコンを取り込むことが可能になる。

ビジネス機会は“エッジデバイス”分野に

 Agilent社のコンポーネントテスト部門でバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャを務めるGreg Peters氏によると、「エレクトロニクス業界の景気回復を受けて、センサー機器や携帯電話機といった“エッジデバイス”分野への投資の拡大が見込まれる」という。同氏は2010年5月、『International Microwave Symposium』における記者会見の席で、ここで言うエッジデバイスのことを“実社会に触れる製品”と表現した。同氏によると、「投資の対象は、人目に触れることのないコンピュータやサーバーなどのコアデバイスからエッジデバイスに移っている」という。こうした機器の応用分野はセキュリティや医療、環境などである。特に医療分野では、携帯型や体内埋め込み型の機器が急増しているという。

 Peters氏は、「エッジデバイスのシステム設計を担当する技術者は、当該分野(アプリケーション領域)の専門家であり、エレクトロニクス分野の専門家ではない。エレクトロニクス機器は自分の業務を行うために必要な道具にすぎない」と指摘した。さらに、無線センサーが急増していることから、利用できる帯域がより多く必要になることが予想される。こうしたコアデバイスからエッジデバイスへの移行に向けた計測装置メーカーの立場からの対応として、Agilent社の場合、携帯型のRFネットワークアナライザやスペクトラムアナライザを投入している。


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