上述したように、ライトフィールドを用いれば、従来のカメラでは実現できなかったさまざまなことが行えるようになる。では、ライトフィールドのデータは、どのようにすれば取得できるのだろう。
ライトフィールドデータの取得方法は、すでに何種類も開発されている。それらは大まかには表1のように分類でき、それぞれに利害得失がある。以下、各方式について説明する。
■多視点撮影
ライトフィールドを多視点画像としてとらえる直接的な撮影方法である。例としては、カメラをレールなどに沿って移動させながら撮影する方法が考えられる(図11)*2)。これであればカメラが1台で済むものの、カメラの移動を制御する機構が必要な上に、動的なシーンを撮影することができない。
そこで、多視点撮影方式では、複数のカメラをアレイ状に配置する手法が用いられることが多い(図12)*8)。この手法では、カメラの数を増やせば増やしただけ、ライトフィールドのデータ規模を高めることができる。その一方で、カメラを支えるフレームや各カメラの同期をとるための機構など、システムの規模が大きく高価になってしまうという問題がある。また、ライトフィールドの取得範囲を広げることはできても、データのサンプリング密度を上げるにはカメラの間隔を狭める必要があり、各カメラのサイズを小さくしなければならない。この問題を解決するために、筆者らは、非常に小型のカメラモジュールを複数敷き詰めた「多眼カメラモジュール」を試作中である(図13)。
多視点撮影方式のもう1つの実現方法は、1つのセンサーの上にレンズのみをアレイ状に配置するというものである(図14)*9)。この方法では、各レンズに対応して1つの視点の画像が記録される。レンズの数の分だけ、各視点の画像の解像度は落ちるが、密度の高い小規模なライトフィールドの取得には適している。
※2…M. Levoy, P. Hanrahan. Light field rendering. Proc. ACM SIGGRAPH 96, pp.31〜42, 1996
※8…B. Wilburn, N. Joshi, V. Vaish, E.-V. Talvala, E. Antunez, A. Barth, A. Adams, M. Horowitz, M. Levoy. High performance imaging using large camera arrays. ACM Trans. Graphics 24(3), pp.765〜776, 2005
※9…J. Tanida, T. Kumagai, K. Yamada, S. Miyatake, K. Ishida, T. Morimoto, N. Kondou, D. Miyazaki, and Y. Ichioka, Thin observation module by bound optics (tombo), concept and experimental verification. Applied Optics 40, pp.1806〜1819, 2001
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