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440VACまで対応可能な電源用整流回路Design Ideas

» 2010年11月01日 00時00分 公開
[Vipin Bothra/John Lo Giudice (スイスSTMicroelectronics社),EDN]

 3相交流電源で動作するエネルギーメーターやHVAC(Heating/Ventilating/Air-Conditioning)システム、大電力の機器などでは、入力電圧として540VAC程度まで対応しなければならないことがある。このことは、電源回路の設計者にとって大きな課題となる。また、90VAC〜440VACといった範囲の入力電圧で電源回路が動作する必要がある場合には、設計上の問題はさらに大きくなる可能性がある。

 こうした問題を解決する回路としてはさまざまなものが考えられるが、選択を誤ると、最終的なシステムコストが大きく高騰してしまうことがある。電源回路が240VACまでの入力電圧で動作すればよいのであるなら、使用できる部品は豊富にそろっているが、それ以上の電圧にも対応できなければならないとすると、多くの半導体メーカーにとって製品の提供が難しい領域となってしまうからである。

図1フライバックコンバータの前段に用いる整流回路 図1 フライバックコンバータの前段に用いる整流回路 

 図1に示したのは、上述した問題を解決する回路である。主に整流回路とチョッパ回路から成るもので、後段に配置されるフライバックコンバータへの入力電圧を360VDC以下にクランプできるようにする。入力電圧をこのレベルまで制限してやれば、後段のフライバックコンバータでは、標準的に用いられている設計テクニックを活用することができる。すなわち、この回路は、入力が高電圧となる電源回路に対して多くの利点をもたらすことになる。

 標準的なフライバックコンバータとは異なり、この回路ではスイッチング用の高耐圧MOSFETを使う必要がない。つまり、一般的に利用可能で、より安価なMOSFETを使用することができる。また、電源回路全体としてのスイッチング損失が、この回路の出力電圧の低下とともに劇的に減少する。加えて、この回路を利用する場合、沿面距離/空間距離に関する要件が緩和されるので、フライバックコンバータにおいて、小型で低コストなトランスを使用することが可能になる。さらに、この回路の出力電圧は低く抑えられることから、縦積みのMOSFETと、2個ないしは3個の高耐圧のコンデンサを使用するフライバック構成をとる必要がない。

 図1のトランジスタQ2は、ドレイン−ソース間電圧が500Vでオン抵抗が2.7ΩのnチャンネルMOSFET「STP4NK50Z」である。ノードAの電圧、つまりこの回路の出力電圧は、約360VDCに制限される。抵抗R2と同R4から成る分圧回路の電圧(ノードCの電圧)が約6.3Vに達したとき、つまり分圧回路の上端電圧が360Vに達したときにはトランジスタQ1がオンになり、それによってトランジスタQ2がオフになる。

 サージへの耐性を保つために2Wの電力容量が必要な抵抗R1を除いて、ほかの抵抗の電力容量は0.25Wで済む。この回路の動作試験を行ったところ、90VAC〜440VACの入力に対して出力電力が12Wでも問題は生じなかった。なお、フライバックコンバータへの最大入力電流については、トランジスタQ2の熱的性能に依存して決まることになるので、別途検討を要する。

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