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Intersil社のHEV/EV向け電池監視IC、デイジーチェーン接続に差動信号を利用

» 2010年11月22日 08時00分 公開
[EDN Japan]

 米Intersil社は2010年11月、ハイブリッド車(HEV)/電気自動車(EV)などに搭載される大容量の2次電池モジュール向けの電池監視IC「ISL78600」を発表した。すでに量産を開始しており、1万個購入時の単価は6.50米ドル。

 ISL78600は、HEVやEVに搭載されている大容量の2次電池モジュールを構成する個別の電池セルの電圧を測定/監視する用途に用いる。同製品1個で、直列に接続した6個から12個までの2次電池セルの電圧を監視することが可能だ。また、デイジーチェーン接続によって同製品を多段で接続することで、13個以上の2次電池セルの電圧を監視することもできる。例えば、現行のHEVには、120個〜168個の2次電池セルが搭載されている。従って、1台当たり10個〜14個のISL78600を使用すれば、これらの2次電池セルの電圧を監視することが可能になる。

写真1 Intersil社のKennethLenk氏 写真1 Intersil社のKennethLenk氏 

 ISL78600の最大の特徴は、同ICを複数使ってデイジーチェーン接続で利用する場合に、それぞれの間を差動信号で結ぶことである。Intersil社でオートモーティブ製品のマーケティングマネジャを務めるKenneth Lenk氏(写真1)は、「HEVやEVの大容量の2次電池モジュールは、高電圧/大電流を扱う。その内部に使用するICの通信接続は、高電圧/大電流に起因するノイズに対して高い耐性を備えている必要がある。そこで、当社は、HEV/EV向けの電池監視ICとして、業界初の差動信号によるデイジーチェーン接続を採用した」と説明する。また、分散配置された2次電池モジュール間の電圧に関する情報をやりとりする通信ケーブルに、低価格のツイストペアケーブルを利用できることもメリットの1つだという。

写真2 「ISL78600」と「ISL78601」を搭載した開発ボード 写真2 「ISL78600」と「ISL78601」を搭載した開発ボード 赤色の線で囲んだICがISL78600、黄色の線で囲んだICがISL78601である。

 電池セルの電圧をデジタル信号に変換するA-Dコンバータには、分解能が14ビットのものを採用した。電圧の測定精度は±2mVを達成している。ちなみに、競合他社が発表している電池監視ICは、分解能が12ビットのA-Dコンバータを採用しているものがほとんどである。また、ISL78600のA-Dコンバータは逐次比較型のものだが、同製品を1個使用して12個の電池セルを監視する場合でも、すべてのセルの電圧測定を250μs以内に完了できる。

 ISL78600の発売に合わせて、同ICと組み合わせて利用するIC「ISL78601」も発表された。ISL78601は、ISL78600とは独立して動作するもので、ISL78601で電圧を測定/監視している2次電池モジュールの状態のモニタリングや不具合の検出が行える。すなわち、システムに冗長性を与えるためのものだ(写真2)。Lenk氏は、「ISL78600とISL78601を組み合わせて利用することにより、自動車向けの機能安全規格ISO 26262(関連記事)において、2番目に厳しい安全要件であるASIL(Automotive Safety Integrity Level) Cの要件を満たすことができるようになる」と語る。ISL78601の1万個購入時の単価は1.85米ドルである。

 ISL78600とISL78601のそのほかの仕様は以下のとおり。ISL78600のパッケージは、外形寸法が10mm角の64端子TQFP。ISL78601のパッケージは、外形寸法が9.7mm×4.4mmの38端子TSSOP。両ICとも、動作温度範囲は−40〜105℃で、車載ICの品質規格であるAEC-Q100に準拠している。

 現在、Intersil社の全売上高に対する車載関連製品の比率は10%程度にとどまっている。Lenk氏は、「今後は、ISL78600を筆頭に、日本市場における車載関連製品の展開に注力することにより、この数字を伸ばしていきたい」と述べている。

(朴 尚洙)

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