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ルネサスがカーナビ用SoCの最上位品を発表、4+1コア搭載で処理性能は約12GIPSを達成

» 2011年10月18日 00時00分 公開
[朴尚洙,Automotive Electronics]

 ルネサス エレクトロニクスとルネサス モバイルは2011年10月、東京都内で記者会見を開き、カーナビゲーションシステム(以下、カーナビ)をはじめとする車載情報機器向けSoC(System on Chip)「R-Car」の第3弾製品として、最上位品に位置づけられる「R-Car H1」を発表した(図1)。2〜3年後以降の市場投入が予想されるような、次世代のハイエンド車載情報機器の用途に向ける。2011年1月からサンプル出荷を開始し、2012年12月から量産を開始する。量産規模は、2013年12月時点で月産10万個を計画している。サンプル価格は未定。なお、ミッドレンジ市場カーナビ向けSoC「R-Car M1シリーズ」のサンプル価格は4000円で、普及価格帯カーナビ向けSoC「R-Car E1」のサンプル価格は3000円である。


図1 「R-Car H1」の機能ブロック図 図1 「R-Car H1」の機能ブロック図 

 ルネサス エレクトロニクスの自動車システム統括部で自動車システム技術部の部長を務める平尾眞也氏は、「車載情報機器向けSoC市場において、国内外ともに圧倒的トップに位置するルネサスとして、R-Carの最上位品となるR-Car H1には、今後発売される高級カーナビや高級車の車載情報機器に求められるような機能を実現できるような高い処理性能と周辺回路を付与した」と語る。

図2 「R-Car H1」のプロセッサの処理性能 図2 「R-Car H1」のプロセッサの処理性能 

 平尾氏が「業界最高」と主張するプロセッサの処理能力は、約12GIPS(1GIPSは1秒間に10億回の命令を処理する能力)を達成した。同社が、これまで車載情報機器向けSoCの最上位品に位置づけてきた「SH-Navi3」の約6倍となる(図2)。搭載するプロセッサコアは、アプリケーション処理用のプロセッサコアとしてARMの「Cortex-A9」コアを4個と、リアルタイム性を求められる処理を行うサブプロセッサとしてSH4-Aコアを1個の合計5個である。Cortex-A9コアの動作周波数は1GHzで、4個のコアを合計した処理能力は10GIPSに達する。一方、SH4-Aコアの動作周波数は800MHzで、処理性能は1.76GIPSである。これらを単純合計すると11.76GIPSとなる。

 現在までに発表されている車載情報機器向けSoCでR-Car H1と並ぶ処理性能を持つのは、Freescale Semiconductorの「i.MX 6Quad」だけである。i.MX 6Quadは、動作周波数が1.2GHzで、Cortex-A9コアを4個搭載することから、処理性能は最大で12GIPSに達すると見られる。ただし、「i.MX 6シリーズ」のサンプル出荷時期は2011年末となっている。

図3 「R-Car H1」のグラフィックスの処理性能 図3 「R-Car H1」のグラフィックスの処理性能 

 また、R-Car H1は、グラフィックス性能についても大幅な強化を図った。R-Carでの全てに搭載されているImagination Technologiesのグラフィックスエンジン「PowerVRシリーズ」の中でも、3Dグラフィックスの処理性能が83メガポリゴン/秒となるデュアルコア構成の「PowerVRSGX543MP2」を採用している。この処理性能はSH-Navi3の約8倍に達する(図3)。これにより、さらに高度な3Dグラフィックスを用いたGUI(Graphical User Interface)を実現できるという。ほかにも、1080p(1920×1080画素、60フレーム/秒、プログレッシブ)の高品位(HD)映像のデコードを行える回路「VDP1」や、I/P(Interlace/Progressive)変換やガンマ補正などの画質補正機能に対応するイメージエンハンサ「VSP1」を搭載した。マルチメディア関連では、7.1チャネルサラウンドのオーディオ再生が可能な回路「SRU(サウンドルーティングユニット)」も搭載している。

図4 「IMP-X3」で実現できる画像認識機能の例 図4 「IMP-X3」で実現できる画像認識機能の例 

 さらに、他のR-Carの製品が持たない画像認識機能も搭載している。もちろん、その処理性能は、プロセッサ、グラフィックスと同様にSH-Navi3よりも高められている。R-Car H1に搭載された画像認識エンジン「IMP-X3」は、2011年10月に発表された画像認識SoC「SH7766」に採用した「IMP-X2」をデュアルコア構成にしたものである。このため、SH-Navi3に搭載された画像認識機能の約4倍の処理性能を有しているという。平野氏は、「IMP-X3を活用することにより、標識認識と走行車線認識など、複数の画像認識アプリケーションを同時に処理できるようになる。これも業界初の機能だ」と強調する(図4)。加えて、R-Car H1は、ビデオ入力インタフェースを4チャネル備えているので、自車両を上から見下ろす視点で周辺の映像を表示する駐車支援機能のトップビューを容易に実現することが可能だ。ただし、「SH7766とは異なり、現行の一般的な車載カメラから出力されるNTSC方式のアナログ映像をデジタル信号に変換するためのA-Dコンバータは内蔵していない。しかし、R-Car H1が用いられる車載情報機器の場合、より画素数の高いデジタル出力の車載カメラが用いられると想定しているので、A-Dコンバータは不要だと考えた」(同氏)という。

図5 メモリ構造の工夫 図5 メモリ構造の工夫 

 これらの高い処理性能を持つ回路を複数備えていることから、メモリ構造についても工夫を凝らした。DDR(Double Data Rate)3 SDRAMインタフェースの構成を、32ビット(容量4ギガバイトまで)×2チャネルとしたのだ。2チャネルにすることで、複数の処理を同時に行う際に干渉が起らず、スムーズなアプリケーションを実行できる(図5)。あるマルチタスクで行っているリアルタイム処理について、そのメモリバス効率を計測した事例を挙げると、32ビット×2チャネルは60%以上だったが、64ビット×1チャネルは40%以下にとどまった。

 他にも、SDXCやUHS-Iなどの最新規格に対応するSDカードインタフェースの搭載や、情報系車載LANの最新規格MOST(Media Oriented Systems Transport)150への対応など、将来的にハイエンド車載情報機器で必要とされる可能性の高い機能を備えた。また、拡張性を担保するためのPCI Express Gen2.0を1レーン搭載している。

 R-Car H1のその他の仕様は以下の通り。電源電圧は、I/Oが3.3V、DDR3メモリが1.5V、プロセッサコアが1.2V、PCI ExpressとMOST150のインタフェースが2.5V、SDカード関連のインタフェースが1.8V。消費電力は非公開。パッケージは、外形寸法が27mm×27mmで、端子数が832本のFCBGAである。

 会見では、R-Car H1の評価ボードを用いて、メイン画面で3D地図データの処理を、PinP(Picture in Picture)画面で3DのGUIを用いたマルチメディア処理を同時に行うデモンストレーションを行った(図6)。

図6 評価ボードを用いたデモ 図6 評価ボードを用いたデモ

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