日本テキサス・インスツルメンツのDLP(Digital Light Processing)用開発・評価キット「DLP LightCrafter」は、産業用機器や医療機器、セキュリティといった新たな用途を対象にしている。具体的には、指紋認証や顔認証、3次元計測/イメージングといったアプリケーションだ。
日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は2012年2月、産業用機器や医療機器、セキュリティといった「非ディスプレイ用途」を対象にしたDLP(Digital Light Processing)用開発・評価キット「DLP LightCrafter」を発表した。
DLPとは、「DMD(Digital Micromirror Device)」チップを光変調器として利用するプロジェクション技術(関連記事その1、その2)。DMDには、独立して動作可能なμmオーダーのサイズのミラー(マイクロミラー)がすき間なく敷き詰められており、これを高速に制御することで入射光を反射させ、映像を作り出す。DLPはこれまでプロジェクタや映画、テレビ、モバイル機器といった「ディスプレイ用途」に採用されてきた。TIはDLPの新たな用途として、前述の非ディスプレイに注目しており、市場開拓を進める方針だ。DLP LightCrafterhは既に販売を開始している。参考価格は599米ドル。
DLP LightCrafterは、最大でWVGAサイズ(画素数:854×480画素)までの表示に対応した対角アレイ寸法が0.3インチのDMD「DLP3000」と、DLP3000用制御IC「DLP300」のチップセット「0.3 WVGAチップセット」を採用した。1秒間に最大4000枚のバイナリパターン(1ビットの縞パターン)を表示する能力を有する。この他、DLP LightCrafterには、赤、緑、青のLEDイルミネーションモジュールで構成した光学回路や、デジタルメディアプロセッサ「DM365」やFPGA、128MバイトのNAND型フラッシュメモリ、各種インタフェースを搭載したプロセッサ・インタフェースボードが含まれているので、機器設計者はすぐに開発に利用できる。
光学回路の輝度は20lm(ルーメン)以上に達する。指紋認証や顔認証、3次元計測、3次元イメージングといった用途を想定し、構造化光(ストラクチャード・ライト)の波形パターンもあらかじめ幾つか用意した。対象物に構造化光を照射し、戻って来た光を処理することで対象物の構造を把握できる。
日本TIが2012年2月10日に開催した報道機関向け説明会で、TI本社のDLP事業部シニアバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーを務めるKent Novak氏は、「産業、医療、セキュリティといった分野は当社の既存の顧客基盤が生かせる市場だ。現時点では非ディスプレイ用途の売上高割合はまだまだ小さいが、将来的には大幅な成長が見込める」と語った。
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