日本テキサス・インスツルメンツの「DS1xxDF410」は、伝送線路の挿入損失を補償するイコライザとデエンファシスの他に、伝送波形を再生成してジッターを除去するCDRや、クロストークを低減するDFEを集積した波形補正ICである。4チャネルを集積し、消費電力はチャネル当たり175mWに抑えている。
日本テキサス・インスツルメンツ(TI)は2012年2月、ネットワーク機器などに使う高速シリアルインタフェースの伝送波形を補正し、伝送可能距離を延長する機能を備えた波形補正ICを拡充し、新たに10品種を追加した。追加品が対応するデータ伝送速度は品種によって異なり、最大12.5Gビット/秒。いずれも、消費電力を低く抑えつつ伝送可能距離の改善性能を高めたことが特徴だ。「基板材料にFR-4を用いたバックプレーン上で50インチ超、AWG 26番相当の銅ケーブルで20m超の伝送距離を確保できる。しかも、チャネル当たりの消費電力は競合他社品の半分程度と低い」(同社)と主張する。
10G/40G/100Gビット/秒のイーサネットや、10GBASE-KR(IEEE 802.3ap)、インフィニバンド(InfiniBand)、ファイバチャネル(Fibre Channel)、CPRI(Common Public Radio Interface)といった規格の高速シリアルインタフェースに使える。具体的には、サーバ装置やルータ装置、スイッチ装置などにおいて、ラインカードやスイッチファブリックなどのフロントエンド部に配置し、各ボードに実装されたネットワーク処理用のASICやFPGAがバックプレーンや銅ケーブル、光モジュールなどを介してやりとりする高速シリアル信号の波形を整える役割を担う。
10品種の内訳とそれぞれの機能は以下の通り。まず、伝送線路の挿入損失を補償するイコライザとデエンファシスの他に、伝送波形を再生成してジッターを除去するCDR(Clock Data Recovery)を集積した品種(同社は「リタイマ」と呼ぶ)が3つ。リタイマのイコライザは、パラメータを自動的に調整して最適値に設定する適応型を採用しており、補正能力は36dB。リタイマのデエンファシスの補正能力は12dBである。次に、このリタイマの機能に加えて、クロストークを低減するDFE(Decision Feedback Equalization)も備えた品種(同社は「アドバンスト・リタイマ」と呼ぶ)が3つ。そして、非適応型のイコライザとデエンファシスのみを搭載した品種(同社は「リピータ」と呼ぶ)が2つ。さらに、2対1のマルチプレクサと1対2のデマルチプレクサを混載した品種が2つである。
これらのうち、リタイマとアドバンスト・リタイマ、リピータについては、パッケージとピン配置の互換性を確保した。従ってユーザーは、機器の開発を進めながら必要に応じて、高機能品に置き換えたり低機能品に変更したりすることが可能だ。
各製品群で用意されている複数の品種の違いは、対応するデータ伝送速度である。例えばアドバンスト・リタイマの3品種は、9.8G〜12.5Gビット/秒に対応する「DS125DF410」と、8.5G〜11.3Gビット/秒の「DS110DF410」、10.3Gビット/秒の「DS100DF410」である。3品種ともにパッケージは7×7mmの48端子LLP。いずれも4チャネルを集積しており、消費電力はチャネル当たり175mWに抑えた。なお他の品種の消費電力については、リタイマが150mW、リピータが65mW(いずれもチャネル当たりの値)と低い。
10品種ともに既にサンプル出荷を始めており、2012年第1四半期後半に量産出荷を開始する予定である。1000個購入時の参考単価は9.95〜18米ドル。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.