IEEE 802.11b/gに準拠する無線LANチップの他、ネットワーク処理を担うソフトウェア群を格納したEEPROMチップや、クロック発生回路、高周波フロントエンド回路などをまとめたモジュール品である。安価なマイコンを使うさまざまな機器に簡単に組み込め、Wi-Fiや高周波の経験も不要だという。
日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は、安価なマイコンを使うさまざまな組み込み機器に容易に搭載できることを特徴とするWi-Fi(無線LAN)通信モジュール「CC3000」を発表した。通常は機器のホストマイコンがソフトウェアで処理するWi-Fiのネットワーク機能の大部分を、このモジュールにあらかじめ搭載して機器メーカーに供給する。集積するメモリ容量の少ない安価なマイコンを使う機器でも、Wi-Fi機能を組み込めるようになるという。さまざまな機器がインターネットサービスにつながる「モノのインターネット(Internet of Things)」の普及促進を狙っており、具体的には白物家電や家庭用セキュリティシステム、ヘルスケア/フィットネス機器、スマートメーターなどに向ける。
今回発表したCC3000は、IEEE 802.11b/gに準拠する無線LANチップを中核とし、ネットワーク処理を担うソフトウェア群を格納したEEPROMチップの他、クロック発生回路、高周波フロントエンド回路などをまとめたモジュール品である。EEPROMには、TCP/IPのスタック(IPv4のDHCPクライアント、DNS、ARP)や、セキュリティサプリカント(認証処理ソフトウェア)、Wi-Fiドライバなどが搭載されており、無線LANチップに集積されたプロセッサがそれらを実行する。そのため「ホストマイコン側には、ホストAPIとSPI(Serial Peripheral Interface)ドライバを実装すればよい。無線LAN機能の追加に必要なコードサイズは小さく、メモリ容量はわずかにフラッシュメモリが6Kバイト、RAMが3Kバイトで済む。リアルタイムOSの環境や、OS無しの環境でも利用できる」(日本TI)。これに対し競合他社が供給する無線LAN製品では、「コードサイズは128Kバイトを超える」(同社)という。
ホストマイコンとの接続はSPIを使う。データのスループットはTCP/IP通信時に4Mビット/秒にとどまり、動画像をやりとりする用途などには向かない。「このモジュールを組み込む機器がセンサーで取得したデータをホストシステムに送信する用途などを想定している」(同社)。
消費電流については、シャットダウンモード時に5μA以下(電源電圧が3.3Vのとき)に抑えた。動作時は条件によって異なるが、例えば受信動作時に信号電力が15dBmと比較的高い場合に、92mA(電源電圧が3.6Vのとき)だという。
価格は購入数量などによって異なり、1000個購入時の参考単価を20米ドルに設定している。米国のFCC(Federal Communications Commission)とカナダのIC(Industry Canada)、欧州のETSI(European Telecommunications Standards Institute)が定める高周波無線の標準規格に準拠し、各機関の認証を取得済みだ。
モジュールの製造は、LS Research(LSR)と村田製作所の2社がそれぞれ担当する。LSRは動作温度範囲が−40〜85℃と広い品種「CC3000-TiWi-SL」を供給する。外形寸法は14×21×2.3mm。村田製作所はより低コストの大量生産品と位置付ける「CC3000-TypeVK」を手掛ける。動作温度範囲は−20〜70℃、外形寸法は16.5×11.5×2.2mm。既にサンプル出荷中で、量産品の製造を始めている。評価キットも用意した。参考価格は199米ドルである。
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