電子機器はICを利用した多数の回路ブロックによって構成されています。ICの駆動には極めて安定した電圧の直流が必要です。とりわけ、携帯電話やノートパソコンといったバッテリ駆動のモバイル機器では、高機能化への対応とバッテリ電力の節約のために、ICの低電圧化・大電流化が進行していて、わずかな電圧変動も誤動作の原因となってしまいます。そこで、重要な役割をするのがICの電源ピンとアースピンの間に接続されるコンデンサです。これはデカップリングコンデンサとかパスコンと呼ばれます。
前述のように、「直流を通さず、交流を通す」というのが、コンデンサのもう1つの基本機能です。電圧変動をもたらすのは電源ラインの直流に乗った交流成分です。デカップリングコンデンサはこの交流成分をアースに逃がすとともに、絶えず電荷を蓄えておいてICに安定した電圧の直流を供給する役割を果たしています。
電源ラインの直流電流には高周波のノイズも侵入してきます。アルミ電解コンデンサは大容量を特長としますが、高周波ノイズのノイズ除去が苦手です。一方、積層セラミックチップコンデンサは小型であることに加えて、広い周波数領域において高いノイズ除去効果を示します。このためデカップリングコンデンサとして積層セラミックチップコンデンサが多用されているのです。
摩擦電気をためる実験装置として生まれたコンデンサは、電子機器の登場により、抵抗、コイルとともに3大受動部品として利用されるようになりました。当初は電源の平滑用が主な用途ですが、やがて通信・放送機器の回路において不可欠な部品となりました。
また、能動部品の主役が、真空管からダイオード、トランジスタやICに置き換わると、電子機器の小型・軽量化ニーズとともに、コンデンサをはじめとする受動部品の小型化も急速に進みました。こうしてマイクロエレクトロニクス革命が到来しました。
例えば1985年に登場した初の携帯電話では、肩から下げて運ぶタイプのショルダーホンと呼ばれるもので、重さが3kg以上もありました。それから二十数年を経た現在、ポケットに収まる小型化と100gを切るまでの軽量化を達成しました。そればかりでなく、iモードやカメラ機能、ワンセグ対応など、単なる通話機器ではなく高度なマルチメディア端末へと飛躍的な進化を遂げました。
電子機器を多機能化しようとすると回路が増えることになり、部品搭載のためのスペースが必要です。小型化・多機能化という時代のニーズに応え、電子部品の小型化革命をけん引してきたのは、積層セラミックチップコンデンサに代表される積層チップ部品です。
次回は、「直流を通さず、交流を通す」というコンデンサのもう1つの基本性能が、電気・電子機器において、どのように活用されているかを中心にご紹介します。
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