古いレギュレーターICを使って、ミリオーム・メーターを簡単に作る方法を紹介する。
筆者が最近、組み立てたボードの不具合を調べていたときのことである。搭載した回路のどこかで電源プレーンと接地プレーンが短絡していることに気付いた。ところが、短絡箇所の特定に使うミリオーム(mΩ)メーターのような測定器が手元になかった。そこで筆者は、ミリオーム・メーターを簡単に構成する手段を探し出そうとインターネットにアクセスしてみた。
この結果、あるメーカーのデータ・シートに答えが記載されているのを発見できた。基本的な4端子法を使って低抵抗を測定する方法が記載されていたのである。4端子法では、定電流供給回路(定電流源)を測定対象の抵抗に接続し、定電流源から独立した電圧測定回路で抵抗の両端に発生する電位差を測定する。
見つけ出したデータ・シートでは、電圧基準ICを使って定電流源を構成していた。そこで筆者は早速、自分の部品箱をひっくり返してみた。部品箱にはさまざまな古い部品が放り込んである。すると可変型電圧レギュレーターIC「LM317」(IC1)が見つかった。この電圧レギュレーターICは、VOUT端子とVADJ端子の間に一定の基準電圧(1.25V)を発生させる。この2端子間に抵抗を取り付ければ、定電流源として機能させられるわけだ。
定電流源は確保できた。次に、定電流源の出力電圧を制限する必要があった。IC1を定電流源構成で使うと、出力インピーダンスが高すぎる場合、VIN端子に印加した電圧に等しい電圧がVOUT端子から出力されてしまうからである。筆者が検証していたボードは3.3V電源で動作する。一方、電圧レギュレーターの入力電圧は電源装置あるいは9Vの電池から供給するつもりだった。この入力電圧に等しい電圧がVOUT端子から出力されてそのままボードに印加されると、ボードに搭載した3.3V電源の論理ICが損傷を受ける可能性がある。このため、定電流源の出力電圧は3.3Vに、できれば1.5V以下に抑えておく必要があった。
そこで考え出したのが、図1の回路構成である。
IC1を使って、npn型ダーリントン・トランジスタQ1のベース端子を制御する。IC1は、スイッチS2で選択した抵抗に掛かる電圧が一定になるような定電流源を構成する。スイッチS1は電池の寿命を長くするために設けてある。
定電流源の供給電流は、Q1のエミッタ端子に接続される抵抗の大きさによって決まる。図1では、S2を切り替えることで供給電流を10mAあるいは100mAに設定できるようにした。定電流源の供給電流値を校正するには、テスト端子Aとテスト端子Bの間に抵抗負荷を接続し、デジタル電圧計で抵抗の両端の電圧を測定すればよい。筆者は5Ωと10Ωを使って、S2の設定状態の一方が10mA、もう一方が100mAになるように可変抵抗P1とP2を調整した。
実際に抵抗値を測定する際には、測定対象の抵抗の両端をテスト端子AとBに取り付ける。デジタル電圧計の測定レンジはミリボルト(mV)レンジに設定しておく。このデジタル電圧計で測定対象の抵抗に掛かる電圧値を読み取ればよい。電圧値が測定対象の抵抗値に比例することから、測定対象の抵抗値を求められる。定電流源の供給電流を10mAと100mAに校正した場合には、10mAレンジで100/V(測定電圧1mVで100mΩ)、100mAレンジで10Ω/V(測定電圧1mVで10mΩ)となる。
プリント基板上の短絡箇所を見つけ出すには、短絡している可能性がある配線パターンそれぞれにテスト端子AとBを取り付けておく。さらにデジタル電圧計のプローブの一方をテスト端子Aに取り付ける。この状態で、もう一方のプローブを短絡が疑われる配線パターンに接触させてみる。ある配線パターンについて、どの位置にプローブを接触させてもデジタル電圧計の測定値が変化しなければ、その配線パターンでは短絡が発生していないと判断できる。
短絡箇所を特定するためには、デジタル電圧計の測定値が小さい配線パターン上で測定値が大きくなる場所を探し出すか、測定値が大きい配線パターン上で測定値が小さくなる場所を探し出せばよい。
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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。
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