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オーディオ機器の要「D-AコンバータIC」の機能と構成デジタルオーディオの基礎から応用(4)(3/4 ページ)

» 2012年07月25日 13時00分 公開
[河合一,EDN Japan]

実際のDACデバイスの構成

 実際のDACデバイスを例に、構成と動作を解説する。図3図4は、それぞれ実際のミドルレンジ、ハイエンドのデジタルオーディオ製品に用いられているDACデバイスのブロックダイアグラムである。図3にはTIのPCM1792A、図4には旭化成エレクトロニクスのAK4399のダイアグラムを示した。いずれの品種も、PCM信号またはDSD信号の高品位オーディオ信号変換機能を有しており、チャンネル数は2チャンネル(ステレオ)である。

PCM1792A

 まず、図3のPCM1792Aについて解説する。基本的に図2に示したブロックダイアグラムと近似している。デジタルフィルタ部には、「×8……and Function Control」という記述がある。これは、基本的なデジタルフィルタ動作に加えてデジタルボリューム、ソフトミュート、ディエンファシス制御、位相反転制御といったオプション機能を制御するセクションも含まれているためである。ΔΣ変調部は同社独自開発のAdvanced Current Segments DAC方式の中核のひとつである、後述のCurrent Segments DACとの組み合わせ動作用にΔΣ変調の量子化レベルをマルチレベル(64レベル)化しており、このΔΣ変調をAdvanced Segments DAC Modulatorと称している。

 D-A変換は「Current Segments DAC」と呼ぶ、アナログ定電流セグメント方式であり、ΔΣ変調のレベル数と同数の64個の定電流セグメントで構成されている。ΔΣ変調より後段のステージは差動構成になっており、PCM1792Aのオーディオ出力は差動電流出力である。従って、外部に電流−電圧変換(IVC)回路が必要になる。電源としては、デジタル系がVDDとDGND。アナログ系は、内部動作の最適化のために複数の電源(Vccx)とGND(AGNDx)が用意されている。

図 図3 PCM1792Aのブロックダイアグラム (クリックで拡大します)

AK4399

 一方の図4のAK4399も基本的に、図2に示したブロックダイアグラムと似ている。ただ、DSDに対応した品種なのでDSD信号の処理フローが追加されている点が異なる。PCM信号のフローはデジタルフィルタ(8×Interpolator)処理され、デジタルアッテネ―タ(DATT SoftMUTE)を介して、ΔΣ変調器に送られる。AK4399においても、高性能実現のためにマルチレベルのΔΣ変調器を採用しており、同社ではこれを「アドバンスドマルチビット方式」と呼んでいる。

 ΔΣ変調器の出力をアナログ信号に変換するSCFは差動構成であり、オーディオ出力は差動電圧で出力される。電源はPCM1792Aと同様に、アナログ系は複数(AVDD、VDDL、VDDR)用意され、内部動作の最適化が実行されている。DSD信号の場合はデジタルフィルタを経由しない。信号フローではΔΣ変調器を経由しているが、実際にはSCFでアナログ信号に変換されていると推測している。

図 図4 AK4399のブロックダイアグラム (クリックで拡大します)

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