今回の製品解剖の焦点となる部分、つまり電池インタフェース制御モジュール(図3)から考察を始めよう。このモジュールは4層基板を採用しており、表面層にほとんどの部品が実装されている。オレンジ色の電池コネクタと黒色のデータ通信コネクタもある。その他、下層面との連結のためのビアを多数備えたグラウンドプレーンと信号配線も確認できた。第2層には、電源用とグラウンド用のプレーンが基板の高電圧領域の下に広がる。第3層では、信号配線がやはり高電圧領域下を走る。基板の裏面(第4層)は、グラウンドプレーンと信号配線に使われるとともに、幾つかの付加的な部品が実装されていた。
図3の右下にある黒色の基板実装用コネクタは日本圧着端子製造の「ATLPB-21-2AK」。5Vリファレンスの他、低電圧リファレンス、信号グラウンド、CANバスのシリアルデータ(HとL)、高電圧故障信号を通す。オレンジ色の電池コネクタは、電池モジュールからの温度信号と低電圧リファレンス、各電池セル群からの電圧検出信号を通過させる。
電池インタフェース制御システムの中核は、精巧な測定サブシステムだ。このシステムは、完全な組み込み回路システムとなっており、各電池セル群の電圧出力の他、電池パックの温度も監視する。セル電圧は電池コネクタを介して、STMicroelectronicsと韓国LG Chemが共同開発したASIC「L9763」に伝わる。
L9763は、最大10個のリチウムイオン二次電池セル群を個別に監視可能だ。電池セルの負荷電流を監視するためのオンチップ電流検出アンプの他、セル電圧を監視するためのオンチップのアナログマルチプレクサとサンプルホールド回路を内蔵する(図4)。L9763は差動入力を採用しているため、オフセット電圧が高く、しかも、そのレベルが電池パック内での電池セルの位置に依存して異なるという環境下でも、mV(ミリボルト)の精度で電圧を測定できる。
基板の設計者は、このような厳しい動作環境においても良好なシグナルインテグリティーを実現するべく、信号配線のレイアウト法や絶縁手法、グラウンドプレーンを工夫し、それぞれの手法を組み合わせていた。
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