仮想ネットワークの規模を4倍に、Broadcomのデータセンター向けスイッチLSI：Broadcom StrataXGS Trident II

「StrataXGS Trident II」は、シングルチップで100ポート以上の10Gビット/秒イーサネットに対応するスイッチLSIである。VXLANとNVGREの仮想ネットワーク規格に対応しており、従来品に比べて約4倍の仮想ネットワーク規模を実現しているという。

[村尾麻悠子，EDN Japan]

　Broadcomは2012年9月、クラウドデータセンター向けのスイッチLSI「StrataXGS Trident II（以下、Trident II）」を発表した。仮想ネットワークと物理ネットワークを切り替えるもので、同社の従来品「StrataXGS Trident I（以下、Trident I）」に比べて2倍となる1280Gビット/秒のスイッチング容量を実現している。これによって、10GbE（Gビット/秒イーサネット）×96ポート＋40GbE×8ポート、10GbE×64ポート＋40GbE×16ポート、40GbE×32ポートといった構成が可能だ。シングルチップで10GbEポートを100個以上提供する製品は、「業界初」（Broadcom）だとしている。

　Trident IIは、ネットワークの高速化を実現する「Smart-NV」という独自の技術を搭載している。これにより、仮想化ネットワークの規模を、Trident Iを用いた場合に比べて約4倍相当にできるという。具体的には、仮想ネットワーク上のテナント数やテナント管理用のIDの数、VSP（Virtual Switch Ports）の数、仮想化サーバーホスト当たりの専用サービスの数を増やすことが可能だ。なお、VSPとは、複数の仮想ポートを1つの物理ポートに束ねるもの。また、クラウドネットワーキング規格であるVXLANとNVGRE^＊1）に対応する点も大きな特長となっている。これらの規格をサポートしていることで、仮想ネットワークのさらなるスケールが可能になるという。

＊1）VXLANはVMwareやCisco Systemsが、NVGREはMicrosoftが中心となって提案している規格である。

　さらに、Trident IIでは、「Smart-Buffer」と呼ばれる技術を搭載し、全てのポートにパケットバッファを動的に割り当てることで、メモリの使用効率を従来比で5倍に向上した。チップに内蔵したメモリでパケットのバッファを行えるので、従来品のようにメモリを外付けする必要がなくなるという。例えば、10GbE×96ポートの構成では、Smart-Bufferの技術を搭載していない場合、40Mバイトの外付けメモリが必要になる。同技術を用いれば、7.6Mバイトの内部メモリで同等の処理ができるという。外部メモリとパケット間のやりとりがなくなるので、遅延を最小限に抑えることも可能だ。

外付けメモリが不要になるので、コスト低減にもつながる。（クリックして拡大）

なぜ、高速スイッチLSIが必要なのか

　スマートフォンやタブレット端末の普及などにより、コンテンツの消費量は増加の一途をたどっている。例えば、2010年から2015年にかけて、世界のモバイルデータトラフィックは26倍に増加すると予測されている。また、2015年には毎秒100万分に相当する動画コンテンツがネットワーク内に流通するとみられている。

スマートフォンやタブレット端末の普及などにより、トラフィックは増加し続ける傾向にある。

Broadcomのスジャール・ダス氏

　Broadcomのインフラストラクチャ＆ネットワーキンググループでプロダクトマーケティングディレクタを務めるスジャール・ダス氏は、「ネットワークの帯域幅や規模の向上は常に要求されているものの、そこには基板面積やシステムコストの制限、消費電力といった課題がある。こうした状況を受けて、ネットワークインフラとスイッチングの設計は、抜本的に変化しつつある」と述べる。具体的な変化として、例えばサーバの仮想化や、10GbEあるいは40GbE用ポートの増加などが挙げられる。2015年にはサーバの75％が仮想化されるという予測もある。また、2012年から2016年にかけて10GbEポートと40GbEポートは、それぞれ年平均成長率40％、130％の割合で増加する見込みだという。