照明機器の機能は「照らす」こと。LED照明ではLEDから出た光の方向を制御し、目的とする光を得るための光学設計が重要になる。
これまでの連載でLED照明機器を設計する上で気を付けるべき点として、熱対策、電気回路について解説してきました。最終回となる今回は光学設計を取り上げます。
照明機器の機能は「照らす」ことです。単に光ればよいのではなく、その機器の使用目的に応じた光が得られなければなりません。LEDから出た光の方向を制御し目的とする光を得ることが光学設計です。LEDを並べただけのものではなく、LED照明機器とするためには、光学設計が重要です。
配光とは、光源からどちらの方向にどれくらいの強度(光度)で光るかを表したものです。LEDパッケージにはさまざまな形状がありますが、配光もLEDによって異なります。代表的なLEDの配光についていくつか紹介します。
小電流用のLEDでは図1のような砲弾型LEDパッケージがよく使われています。LEDチップから透明樹脂の外に電極が出ていますが、電極が細いためLEDチップで発生した熱を逃がすことが難しく、大電流で使用することができません。
砲弾型の透明樹脂が凸レンズの作用として光を収束させるため、前方に強い指向性を持った配光のものが多いです(図2)。指向性の度合い(広がり角)はレンズ形状によって変わります。LEDだけで集光した光が得られるので、安価なLED懐中電灯などで使われているものを見掛けます。
照明用のLEDでは、LEDパッケージの光出射面がほぼ平らな形状のもの(図3)や、半球ドーム状の透明樹脂のほぼ中心にLEDチップが位置しているもの(図4)が多く見られます。電極が大きく放熱しやすい構造のため、大電流で使用することができます。
配光の指向性は広く、発光面の輝度は見る方向によらずほとんど一定です。これは、ランバート配光(図5)と呼ばれ、正面方向とのなす角をθとした場合、光度分布はcosθに比例します。
また、半球ドームはLEDパッケージからの光取り出し効率を上げることに寄与しています。これは、パッケージ表面が平面になっている場合だと空気との界面で全反射する光がありますが、半球ならば全反射する光が生じないためです。
透明樹脂内で全反射させたり(図6)、凹レンズで屈折させたり、といった方法でLEDチップから前方に出る光を側方に出射させます。図7のように側方に強く光が出る配光が得られます。直下型LEDバックライトのように短い距離で広い範囲を照射するような場合に使われています。また、リフレクターと組み合わせて懐中電灯として使用されているものも見掛けます。
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