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充電中のスマホの誤入力を防ぐタッチスクリーン制御IC、ノイズ耐性は従来比2倍Cypress Gen5 TrueTouchコントローラ

Cypress Semiconductorの「Gen5 TrueTouchコントローラ」は、同社従来品比で2倍となる40Vppのノイズ耐性を実現したタッチスクリーン制御ICである。スマートフォンなどの携帯端末を充電している最中にタッチスクリーンを操作しても、充電器から出てくるノイズの影響を軽減できるので、誤入力や誤操作を起こさずに済む。

» 2013年02月26日 16時25分 公開
[馬本隆綱,EDN Japan]
サイプレスの「Gen5コントローラ」

 Cypress Semiconductor(以下、サイプレス)は2013年2月25日(米国時間)、40Vppのノイズ耐性を持つタッチスクリーン制御IC「Gen5 TrueTouchコントローラ(以下、Gen5コントローラ)」を発表した。ノイズ耐性を高めたことで、スマートフォンなどの携帯端末の充電中にタッチスクリーンを操作しても、充電器から出てくるノイズの影響を軽減できるので、誤入力や誤操作を起こさずに済む。また、ノイズ源となるディスプレイ部にタッチスクリーン制御ICを密着して実装するインセル方式のタッチスクリーンを用いた、より薄型の携帯端末の設計自由度を一段と高められることもメリットになる。

 Gen5コントローラのノイズ耐性は、0.5mm厚のカバーレンズをかぶせたタッチスクリーンを、最大22mmのフィンガーサイズで操作するという前提条件で、1〜500kHzの周波数範囲で測定した。サイプレスは、従来製品の「Gen4コントローラ」でも、20Vppのノイズ耐性を達成していたが、今回はその2倍となる40Vppのノイズ耐性を実現した。

サイプレスのJohn Carey氏

 「競合する他社製品では、同じ測定条件でノイズ耐性が15Vppを超える製品はない」と同社は主張する。サイプレスでTrueTouchテクノロジ マーケティング担当シニア ディレクタを務めるJohn Carey氏は「Gen5コントローラは、アナログフロントエンドの改善などによって、ノイズ耐性をさらに高めることができた」と述べる。

 ノイズ対策が不十分な充電器を使ってタッチスクリーン搭載機器を充電した場合、充電器が発するノイズの影響で、充電中に画面をタッチしてもセンサーが反応しなかったり、誤反応したりするなど、入力/操作ミスにつながるケースがあった。また、携帯端末の薄型化に対する要求が高まる中で、インセル方式のタッチスクリーンを採用する製品が増加してきたこともあり、タッチスクリーン制御ICも、ノイズの発生源となり得るディスプレイ部に密着して実装する事例も増えてきた。このこともタッチスクリーン制御ICに高いノイズ耐性が求められる理由の1つとなっている。

サイプレスの「Gen5コントローラ」

 Gen5コントローラは、ノイズ耐性を向上させるため、アナログフロントエンドを新たに開発した。このアナログフロントエンドは、タッチスクリーンを電圧10V、周波数500kHzで駆動させることができる。駆動電圧を10Vまで高めることでSNR(信号雑音比)を3倍に向上できた。また、充電器から出てくるノイズは周波数が低いため、その影響を回避するためにタッチスクリーンを500kHzの周波数で駆動させることにした。

 さらに、積分コンデンサの容量を2倍にして、ノイズが侵入しても信号が飽和しないようにしたこともノイズ耐性の向上に寄与している。この他、シングルパス相関スキャニングにより、画面全体を一度でスキャンし、その時間を短縮することで消費電流を削減できた。Gen4ではチャネルごとに切り替えていたA-Dコンバータを、Gen5では受信チャネルごとに設けることでダイナミックレンジを拡大することができた。タッチデータのノイズ除去には、DSPフィルタリングも行っている。

 図1は、携帯端末に搭載したGen5コントローラのノイズ耐圧をプロットした結果である。グラフの横軸は周波数で、縦軸は印加したノイズの振幅となっている。青色で示したプロットがGen5コントローラのデータで、赤色で示したプロットは、Gen4コントローラの1つ「Gen4xコントローラ」のデータである。このグラフを見ると、ノイズを印加した時にGen5コントローラはほとんどの周波数帯域で60Vppのノイズも除去できている。ただし、325kHzと425kHzの2カ所だけノイズ耐性が40Vppだったため、製品の仕様値も40Vppにとどめている。

図1 Gen5コントローラを15種類の携帯端末に搭載して行った実験データの結果(クリックで拡大)、出典:サイプレス

 Gen5コントローラは、防水性能も向上している。同社は従来から1つのチップで自己静電容量センシングと相互静電容量センシングを実現する独自の機能を実現している。今回は自己静電容量センシングの性能をさらに50%改善し、水に濡れた環境でのSNRを2倍に向上した。

 第1弾のラインアップとして3品種を用意した。5×5mmの44端子QFPで、28個のセンスI/Oを備えた品種と33個のセンスI/Oを備えた品種、6×6mmの48端子QFPで、36個のセンスI/Oを備えた品種である。特定の主要顧客に対しては既にサンプル品を出荷しており、2013年4〜6月期から量産出荷を始める予定である。Gen5コントローラは、5インチ以下のタッチスクリーンから対応していくが、「ニーズが増えれば他の画面サイズに対応できる製品も拡充していく」(Carey氏)計画である。

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