日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)が発表した「LDC1000」は、インダクタンスをデジタルデータに変換するコンバータICだ。外形寸法は4×5mmで、PCBコイルなどと組み合わせることで、非常に小型の誘導型近接センサーを実現できる。
日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は2013年9月17日、インダクタンスを直接デジタルデータに変換するコンバータIC「LDC1000」を発表した。PCBコイルなどと組み合わせて、誘導型近接センサーシステムを構築できる。既存の誘導型近接センサーに必要な回路を、わずか4×5mmの1チップに搭載している点が特徴だ。これまでは、近接センサーをディスクリートで構成するしかなかったため、センサーシステムの小型化は困難だった。
誘導型近接センサーは、センサーコイル(PCBコイルなどの検出コイル)が形成する磁界の中に金属/導体が入るとコイルのインダクタンスが変化することを利用して、物体を検知したり、位置を検出したりするもの。センサーコイルに金属/導体が近づくとインピーダンス値とインダクタンス値が変化するが、LDC1000は、それらの変化を検出する回路と、変化量をデジタル変換して出力する回路を搭載している。
検出から出力までの具体的な流れは、次のようになる。
LDC1000の発振回路からセンサーコイルに高周波の信号を供給し、センサーコイルから高周波磁束を発生させる。センサーコイルに金属/導体(検出ターゲット)が近づくと、検出ターゲットの表面に渦電流*1)が流れて、センサーコイルのインピーダンスが変化する。この変化を電圧の変化として取り出し、検波回路およびリニアライザ回路によって距離に比例した電圧を出力する。
*1)渦電流の大きさは、センサーコイルと検出ターゲットの距離によって変わる。
LDC1000は、渦電流損失とインダクタンスを、それぞれ16ビット、24ビットの分解能で測定する。こうした高い分解能により、サブミクロン単位での位置検出が可能だという。なお、検出できる距離は、センサーコイルの直径の半分までとなっている。
LDC1000のパッケージは16端子SON。1000個購入時の参考単価は2.95米ドルである。日本TIは、LDC1000と直径14mmのPCBコイルを搭載した評価ボード「LDC1000EVM」も、29米ドルで提供している。同ボードが検出可能な距離は、14mmの半分なので7mmとなる。
Texas Instrumentsのセンサ・シグナル・パスでマーケティング・マネージャを務めるスコット・クルチツキ氏は、「これまでインダクタンスを直接デジタルデータに変換するようなコンバータはなかった。LDC1000によって、10〜15年ぶりにデータコンバータの新しいカテゴリが生まれた」と強調する。
モノのインターネット(IoT)やM2M(Machine to Machine)への注目度が高まっていることもあり、センサーの用途は今後拡大の一途をたどると予測されている。それに伴って、水分や油分、ちり、ほこりが多い環境への耐性や、低消費電力化など、センサーに対するニーズが多様化している。こうした背景もあり、日本TIは、産業機器や車載機器、民生機器、医療機器、モバイル機器、通信機器といったあらゆる分野においてLDC1000の適用を狙うという。
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