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モーター技術者の登竜門、高効率・長寿命のブラシレスDCモーターを理解しようめざせ高効率! モーター駆動入門講座(2)(3/4 ページ)

» 2015年07月01日 10時00分 公開

ブラシレスDCモーターの回転磁界をつくる

 ホール素子が磁石の位置(N極かS極か)を検知して、半導体素子(MOSトランジスタ)をON/OFFさせ、必要なコイルに電流を流す(駆動する)ことで、回転磁界を作っている。モーターを高効率に回すために、駆動すべきタイミングとコイル相は、誘起電圧の状態で決定する。

 誘起電圧とは、電流を流しているコイルに磁石が通過(回転)すると、電力(電圧・電流)が発生する電磁誘導作用である。いわば前回に説明した、コイルに電流を流すと磁界が発生する作用の反作用的な現象である(図3)。ここで、磁石の移動速度を速くすると、コイル端には、より大きな誘起電圧が発生する。誘起電圧はコイルを通過する磁石の磁束変化率に比例するからである。

図3 電磁誘導作用による誘起電圧の発生

この誘起電圧は、発生トルク、モーターの速度、効率を決定する重要な要素だ。モーターにとって重要なキーワードであり、“誘起電圧を制するものは、モーターを制する”と言っても過言ではない。

 図2-右のブラシレスDCモーターの回転子(磁石)を外部の力で回すと、コイル端に図4の波形のように誘起電圧が発生する。では、高効率で駆動のためには、どのタイミングでどのコイル相を駆動すれば良いのだろうか?

 それは、“誘起電圧の高い相から、低い相に電流を流すタイミングで駆動すればよい”。

図4 駆動タイミングと誘起電圧波形、駆動コイル相の関係 (クリックで拡大)

 この法則に従うと、最適な回転磁界の切り替えタイミング、駆動するコイル相は、1回転360°の中で、60°通電ごとで6通りの切り替えをすれば良いことが分かるだろう。(各コイルから見ると120°通電しているので、この駆動を120°通電の方形波駆動という)

 なぜそうするかというと、第1回で説明した通り、高効率駆動には、回転磁界による磁束と磁石の磁束が直交する位置が最適位置で最大トルクが発生するからである。磁石回転によって磁束鎖交数(コイル磁束と磁石磁束の交わり)の時間的変化率が大きくなり、発生する誘起電圧が大きくなる位置関係が、この直交位置となるからだ。よって、誘起電圧が発生している高い相から、低い相に電流が流れるように半導体素子をスイッチし、回転磁界を発生させることで、高効率駆動を実現することができる。

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