今回は、3万円のオシロスコープに内蔵された電源基板の修理の続きを紹介する。前回は破損していた電源制御ICを、オシロスコープの電池のコネクタへ直流電源を供給してとりあえず動かすことにした。しかし、他にも破損している部品があることが見つかった。
今回は“3万円のオシロスコープ”に内蔵された電源基板の修理の続きだ。
前回、高圧プローブを通してオシロスコープで高圧パルス電源を測定したときに表示が消えたが、電源基板の電源制御ICが破損していることが分かった。壊れたICの代替品の入手に時間がかかるので、オシロスコープの電池のコネクタへ直流電源を供給して“とりあえず”動かすことにした。
しかし、電池のコネクタへ8.4Vの電源を接続したら2Aもの大きな電流が流れてしまった。電源基板には他にも破損している部品があるようだ。電源基板の二次側の拡大写真を図1に示す。
図1で右側のICの型名はMC34063A、左側のICはLM358と記載されていた。LM358はよく見るオペアンプだ。MC34063Aの周囲にはコイルやコンデンサがあったので、DC-DCコンバータの回路と思われた。同じ型式のオシロスコープを借りられたので、電源基板を取り出し、AC100Vを通電して動作を確認した。すると、図1の右のコネクタの1,2ピンに−7.4Vの電圧が出力されていた。二次側の回路はマイナス電源を生成するDCDCコンバータに間違いない。
MC34063AのデータシートはWebで見つかった。データシートを詳細に確認したら、マイナス電源を生成する参考の回路も見つかった。その回路図を図2に示す。回路の動作が分かりやすいように、図2に赤・青の矢印で電流の流れと動作の説明を追記している。
図2で読者は回路の動作を既に理解したと思うが、簡単に説明する。
トランジスタQ1がオンするとQ1の右側にある外部コイルLに電流(赤い矢印)を流す。Q1がオフしてもコイルLは電流を流し続けようとして、コンデンサC0とダイオードIN5819を通して電流(青い矢印)を流し続ける。この時にコイルLにたまった電力がコンデンサCOに蓄積される。そして、この動作を繰り返すことでマイナスの電圧がコンデンサC0に生成される。
実装された部品の構成と使用する目的から電源の二次側がこの回路図に相当することはほぼ間違いない。故障した電源基板で8.4Vの電源を入れたら2Aの大きな電流が流れたが、これはトランジスタ(Q1)がオンしっぱなしになって、コイルに電流が流れっぱなしになっているからだろう。
そこで、コイルのGND側のはんだを外して通電したところ、大きな電流が流れなくなった。これでDC-DCコンバータの制御ICのMC34063Aも破損していることは確実だ。
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