オペアンプICはさまざまな半導体メーカーから供給されており、いずれも入力バイアス電流や入力オフセット電流が低く抑えられている。しかし、オペアンプ回路を計測用センサーにケーブル接続する際に発生するESD(静電気放電)の対策が難しい。今回は、その弱点を解決する回路を紹介する。
pH(酸性度)や生体電位など、計測用センサーで高精度な測定を行いたい用途では、入力インピーダンスの高いバッファアンプを共に使用することが多い。そうした用途にも適用できるオペアンプICはさまざまな半導体メーカーから供給されており、いずれも入力バイアス電流や入力オフセット電流が低く抑えられている。
しかし、それらの製品も多くの場合、別の問題を抱えている。オペアンプ回路を計測用センサーにケーブル接続する際には、ESD(静電気放電:electrostaticdischarge)が発生するおそれがある。このESD対策が難しいという弱点があるのだ。
ESD対策としては、図1に示す方法がよく用いられる。この方法では、ESDによる放電電流が発生した場合、それが抵抗R1によって制限される。また、ダイオードD1AとD1BによりオペアンプIC1の入力端子電圧が電源電圧レベルにクランプされ、過大になることがない。
しかし、実はこの方法は万能ではない。例えば、米Fairchild Semiconductor社製の「MMBD1503」のようなリーク電流の少ないダイオードを使用したとする。その場合でも、400MΩといった高い入力インピーダンスのオペアンプが必要となるような用途では、リーク電流が原因で発生するオフセット電圧が問題となるのである。
この問題に対する改善案を図2に示した。この例では、低入力バイアス電流/低入力オフセット電流のオペアンプ「AD8603」(米Analog Devices社製)をゲイン1のバッファアンプとして使用している。通常動作時には、回路の出力電圧VOUTは入力電圧VINに等しい。そのため、ESD保護用のダイオードD1AとD1Bの両端の電位差はほぼ0Vとなり、リーク電流は無視できる程度になる。つまり、オペアンプの入力部はダイオードによる影響を受けない。
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