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メッシュネットワーク技術「TSCH」とは産業用IoTで注目を集める(1/5 ページ)

無線でセンサーデータを収集する必要のある産業用IoT(Internet of Things)。そうしたワイヤレス・センサー・ネットワーク(WSN)を構築する上で、TSCH(Time Synchronized Channel Hopping:時間同期チャンネルホッピング)と呼ばれるメッシュネットワーク技術が注目を集めている。TSCHとは、どのような技術なのか――。詳しく紹介していく。

» 2016年03月28日 11時30分 公開

 産業用IoT(Internet of Things)の導入で最も期待される効果は、ワイヤレス・センサー・ネットワーク(WSN)で集めた実世界のデータを活用して、業務の効率化を図りその流れを最適化することです。WSNを必要とする分野は、建物や道路、工場、トンネル、橋梁、車両、さらにはパイプラインや気象観測所のような遠隔の施設など、多岐にわたります。産業用IoTのそうした分野に共通するWSNの条件とは、消費電力の低さと有線並みの信頼性の両方を、さまざまなネットワーク形状や規模、データレートにおいて実現することです。

 ワイヤレス・メッシュ・ネットワークはますます普及が進んでいますが、これは、低消費電力の無線で結ばれたノード間でメッセージをリレーし、広いエリアをカバーできるようになったことと、代替経路やチャンネルの使用で干渉を克服し、高い信頼性を維持できるようになったことによります。

 例えば、リニアテクノロジーのダスト・ネットワークスが開発し、後にWirelessHART業界標準に組み込まれた、TSCH(Time Synchronized Channel Hopping:時間同期チャンネルホッピング)と呼ばれるメッシュネットワーク技術は、産業用IoTに必要な性能を発揮することが現場で実証されています。TSCHネットワークは、標準で99.999%を超えるデータ信頼性を誇っており、すべてのワイヤレスノードは(そして、ルーティングノードさえ)、小型リチウム電池でのバッテリー動作が数年間にわたって可能です。

 ところで、さまざまなメッシュネットワークで、似たように聞こえるネットワーク技術が使われていますが(例:「周波数アジリティー」と「チャンネルホッピング」、「スリーピー」と「時間同期」)、その性能レベルは大きく異なります。こうしたワイヤレスネットワークの細部によって、プロトコルレベルの選択がWSNの性能に与える影響と、そのネットワークのアプリケーションへの全体的な適性が決まるのです。

ワイヤレス・センサー・ネットワークの課題

 無線は本来、信頼性の低いものであるため、通信システムの信頼性を高めるためには、その原因を理解することが大切です。有線通信は信号がケーブルによって外界から遮られていますが、無線通信は空間を伝搬するため、周囲の環境の影響を受けます。また、他の無線信号源による干渉が生じる場合もあります。

 しかし、より頻繁に起きるのは、自分自身の信号が周囲の面に反射し、位相がずれて到着することで無線信号が減衰する、マルチパスフェージングの影響です(図1参照)。携帯電話ユーザーは、ある場所で信号強度が弱くなったように思い、数センチ移動するだけで改善する、というような形でマルチパスフェージングを毎日体験しています。マルチパスの影響は通常、周囲の反射面(人や車両、ドアなど)が移動するため、経時変化します。ある1つの無線チャネルの信号品質は、時間とともに大きく変動するのです。

図1:マルチパスフェージング
受信機(B)における無線信号の強度は、直接パス(Pd)の影響だけでなく、位相がずれて到着する可能性のある反射(Pm1およびPm2)の影響も受け、著しいフェージングが発生する。

 マルチパスフェージングの予測が原理上できないということは、問題をさらに難しくします。マルチパスフェージングの有無を調べるには、実際にそのチャンネルで送信してみて、その受信結果から判断するしかありません。そのため、未使用のチャンネルで単純に受動信号強度(RSSI)を測定するという方法は、アクティブな干渉源を特定するには役立ちますが、そのチャネルのマルチパスフェージングの有無を予測するには無力なのです。

 幸いにも、マルチパスフェージングはそれぞれの無線チャンネルにおいて異なった現象をもたらし、その現象も時間とともに変化するため、チャンネルホッピングを用いた周波数ダイバーシティーを活用することで、マルチパスフェージングの影響を最小限に抑えられます。WSNプロトコルの課題は、マルチホップの大規模ネットワークでチャンネルホッピングを使用できるようにすることです。

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