IoT時代のさまざまな無線規格を紹介する本連載。前回は、ホームネットワーク向け無線規格として注目を集める「Thread」の入門編をお届けした。2回目となる今回は、Thread Groupが公開しているホワイトペーパーから概要を振り返るとともに、ThreadにおけるIPスタックの基礎を解説する。
【連載「IoT時代の無線規格を知る【Thread編】」バックナンバー一覧】
前回、あらゆるデバイスやセンサーがつながる「IoT」時代を迎え、ホームネットワーク向けに注目を集める無線規格「Thread」の入門編を紹介した。今回からは、Thread Groupが発行しているホワイトペーパーから、Threadの詳細について解説していく。
2016年6月時点で発行されているホワイトペーパーは、下記の5つ。今回は、「Thread Overview」から、Threadの概要を振り返るとともに、IPスタックの基礎を紹介する。
<Thread Groupが公開するホワイトペーパー>
1. Thread Overview
2. 6LoWPAN
3. Security & Commissioning
4. Boarder Routers
5. Battery Operated Devices
Thread は低出力だが、高信頼で経済性に優れたデバイス間通信を規定するオープンな標準規格である。IPベースのネットワークが望まれるコネクテッドホームのアプリケーションに特化して設計され、アプリケーション層にはさまざまなプロトコルが活用できる。Threadスタックとネットワークの特徴を以下に記す。
(1)シンプルなネットワーク
Threadネットワークを形成、参加、保守するシンプルなプロトコルにより、システムは自己形成し、経路の問題が発生するごとに適宜解決される。
(2)安全
デバイスは認証を受けない限りThreadネットワークに参加できない。また、全ての通信は暗号化され安全である。
(3)大小さまざまなネットワーク
ホームネットワークは規模がさまざまで、デバイスが数個の場合から、数百個単位の数をシームレスに通信を行う場合もある。Threadのネットワーク層は、予想される使用状況に応じて最適な運用をするように設計されている。
(4)通信範囲
メッシュネットワークに参加しているデバイスは、一般的な家をカバーする十分な通信範囲がある。周波数拡散技術が物理層に使われ、優れた耐干渉性能をもたらす。
(5)No Single Point of Failure(単一障害点がないこと)
個々のデバイスでの欠陥や欠損が発生しても、Threadスタックは安全で信頼のある運用がされるように設計されている。
(6)低消費電力
典型的なホストデバイスでは、適切なデューティサイクルを設定することで、単三電池で複数年の駆動が可能となっている。
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