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周波数を調整できる高周波ノッチフィルターDesign Ideas アナログ機能回路

今回は、8ピンパッケージのデュアルオペアンプICと、8ピンパッケージのスイッチドキャパシター帯域通過フィルターを使ったノッチフィルターを紹介する。

» 2016年09月29日 11時30分 公開

選択度の高いノッチフィルター

 抵抗可変の汎用スイッチドキャパシターフィルターは、ノッチフィルター*)として使える。ただし、そのほとんどは100kHzよりも高い周波数領域では動作しない。また、パッケージは16〜20ピンである。そして、スプリアス信号が出力に現れるのを防止する、連続時間アンチエイリアシングフィルターを内蔵していない。

*)狭い、特定の周波数帯域だけを大きく減衰させるフィルター。

 ここでは、8ピンパッケージのデュアルオペアンプICと、8ピンパッケージのスイッチドキャパシター帯域通過フィルターを使ったノッチフィルターを示す(図1)。IC2「TLC082」はBi-CMOS技術によるデュアルオペアンプである。従来品「TL082」の接合型FET入力段を低雑音のCMOS入力段に置き換えたもので、高駆動能力のバイポーラ出力はそのままとなっている。

図1:選択度の高いノッチフィルター (クリックで拡大)
オペアンプとスイッチドキャパシターフィルターを組み合わせて構成した。

 TLC082の利得帯域幅積は10MHzある。従って、周波数1MHzでのフィルタリングに使える。TLC082の電源電圧振幅(VCC−VEE)は、最小5Vである。従来品のTL082では最小で6Vを必要とした。この電源電圧振幅は、スイッチドキャパシターフィルターIC1「MSHFS6」の代表的な電源電圧5Vと一致する。

 また、TLC082の一方のオペアンプ(IC2A)を用いて、3次のだ円低域通過フィルターを構成する。もう一方のオペアンプ(IC2B)はノッチフィルターの出力回路になる。

図2:3次低域通過フィルター段の周波数応答 (クリックで拡大)
デュアルオペアンプIC2の一方を使って構成した3次の低域通過フィルターの周波数応答を示した。

 帯域通過フィルターの通過帯域リップルは、約5dBに設定する。帯域外周波数の除去比を高めるためである。連続時間フィルターを800kHzに設定すると、12.5MHzにおいて40dBを超える除去比を得られる。図2には、IC2Aを用いた3次低域通過フィルターの周波数応答特性を示す。

 低域通過と帯域通過を選択できるスイッチドキャパシターフィルターIC1は、クロック対コーナー周波数の比が12対1となっている。このため、エイリアス信号によって測定誤差を生じる前の段階で、ノッチ中心周波数の6.25倍に相当する周波数までの測定を可能にする。低域通過フィルターIC2Aのコーナー周波数を800kHzに設定すると、3次高調波のような高次の歪み成分を測定できる。

 ノッチ中心周波数を常に260kHzより低く設定すると(IC1のクロック周波数は3.3MHz)、抵抗器かコンデンサーの値の調整によって連続時間低域通過フィルターのコーナー周波数をより低い周波数に設定できる。帯域通過フィルターの出力と入力を加算することで、通過帯域において位相が180°シフトしたところで入力信号が打ち消される。

左=図3:スイッチドキャパシターフィルターIC1「MSHFS6」の通過帯域のボード線図/右=図4:図1の回路によるノッチフィルターの特性阻止域の減衰量は50dBある (クリックで拡大)

 図3には、IC1を6オクターブに設定した場合における通過帯域のボード線図を示す。図4はノッチフィルターの特性である。阻止域の減衰量が50dBあることを示している。

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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事から200本を厳選し、5つのカテゴリーに分けて収録した。

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