今回は、8ピンパッケージのデュアルオペアンプICと、8ピンパッケージのスイッチドキャパシター帯域通過フィルターを使ったノッチフィルターを紹介する。
抵抗可変の汎用スイッチドキャパシターフィルターは、ノッチフィルター*)として使える。ただし、そのほとんどは100kHzよりも高い周波数領域では動作しない。また、パッケージは16〜20ピンである。そして、スプリアス信号が出力に現れるのを防止する、連続時間アンチエイリアシングフィルターを内蔵していない。
*)狭い、特定の周波数帯域だけを大きく減衰させるフィルター。
ここでは、8ピンパッケージのデュアルオペアンプICと、8ピンパッケージのスイッチドキャパシター帯域通過フィルターを使ったノッチフィルターを示す(図1)。IC2「TLC082」はBi-CMOS技術によるデュアルオペアンプである。従来品「TL082」の接合型FET入力段を低雑音のCMOS入力段に置き換えたもので、高駆動能力のバイポーラ出力はそのままとなっている。
TLC082の利得帯域幅積は10MHzある。従って、周波数1MHzでのフィルタリングに使える。TLC082の電源電圧振幅(VCC−VEE)は、最小5Vである。従来品のTL082では最小で6Vを必要とした。この電源電圧振幅は、スイッチドキャパシターフィルターIC1「MSHFS6」の代表的な電源電圧5Vと一致する。
また、TLC082の一方のオペアンプ(IC2A)を用いて、3次のだ円低域通過フィルターを構成する。もう一方のオペアンプ(IC2B)はノッチフィルターの出力回路になる。
帯域通過フィルターの通過帯域リップルは、約5dBに設定する。帯域外周波数の除去比を高めるためである。連続時間フィルターを800kHzに設定すると、12.5MHzにおいて40dBを超える除去比を得られる。図2には、IC2Aを用いた3次低域通過フィルターの周波数応答特性を示す。
低域通過と帯域通過を選択できるスイッチドキャパシターフィルターIC1は、クロック対コーナー周波数の比が12対1となっている。このため、エイリアス信号によって測定誤差を生じる前の段階で、ノッチ中心周波数の6.25倍に相当する周波数までの測定を可能にする。低域通過フィルターIC2Aのコーナー周波数を800kHzに設定すると、3次高調波のような高次の歪み成分を測定できる。
ノッチ中心周波数を常に260kHzより低く設定すると(IC1のクロック周波数は3.3MHz)、抵抗器かコンデンサーの値の調整によって連続時間低域通過フィルターのコーナー周波数をより低い周波数に設定できる。帯域通過フィルターの出力と入力を加算することで、通過帯域において位相が180°シフトしたところで入力信号が打ち消される。
図3には、IC1を6オクターブに設定した場合における通過帯域のボード線図を示す。図4はノッチフィルターの特性である。阻止域の減衰量が50dBあることを示している。
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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事から200本を厳選し、5つのカテゴリーに分けて収録した。
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