今回は、低コストのプッシュボタン回路を紹介する。プッシュボタンスイッチを押すとワンショット回路が起動し、その出力によりトグルフリップフロップ(TFF)が起動してその出力レベルが反転する。これにより、デバウンスに対応済みのスイッチとして機能する仕組みだ。
今回は、大型で高価なプッシュ型の機械式スイッチの代わりに利用可能な低コストのプッシュボタン回路を紹介する。図1に示したその回路は、3Vから15Vの電源電圧で動作し、アナログ回路/デジタル回路の制御に使用できる。
図1の回路では、プッシュボタンスイッチを押すとワンショット回路が起動し、その出力によりトグルフリップフロップ(TFF)が起動してその出力レベルが反転する。これにより、スイッチ操作に伴って発生するデバウンスに対応済みのスイッチとして機能する。図1のIC1、IC2は、1個の「CD4027B」に内蔵されている2個のフリップフロップを使用する。
IC1は、その出力をRC回路を介してリセット(RESET)端子に接続することにより、ワンショット回路として機能する。IC1のJ端子をハイに、K端子をローに設定することで、IC1の出力はクロック(CL端子の入力)の立ち上がりエッジでハイになる。
プッシュボタンスイッチはIC1のCL端子とグラウンドの間に接続する。あるいは、プッシュボタンスイッチをCL端子と電源VDDの間に接続してもよい。一方のIC2は、J/K端子をハイに固定することにより、TFFとして機能させる。IC1の出力はIC2のクロック(CL端子の入力)となり、そのクロックの立ち上がりエッジでIC2の出力が変化する。
図2に、この回路における主要な信号波形を示した。
プッシュボタンスイッチを押すと、スイッチのバウンシングによりクロックが発生し、その最初の立ち上りエッジでIC1の出力がハイになる。これにより、コンデンサC1が抵抗R1を介して充電され、その電圧が上昇する。同時に、IC2に入力されるIC1の出力の立ち上がりエッジでIC2の出力が変化する。C1の上端の電圧がIC1のリセット端子の閾(しきい)値を超えると、IC1がリセットされ、IC1の出力がローになる。これに伴い、R1を介してC1が放電し、その電圧が低下する。
C1の充電速度と放電速度は等しく、この速度によりIC1のワンショット回路の出力パルス周期が決まる。この周期により、スイッチを押す時間とバウンシングが起きる期間に対処する仕組みだ。IC1の出力パルス周期は抵抗R1の値によって変化するので、R1の値はプッシュボタンスイッチの特性に応じて選定する必要がある。
なお、IC2のコンプリメンタリ出力(図1であればQ端子の出力)を利用することもできる。その出力により、トランジスタやMOSFET、リレーあるいはスイッチングレギュレータのシャットダウン端子などを制御できる。
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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。
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