本記事では、新たな評価方法として2つを提案する。従来のニアフィールドOTA評価では、スキャナーを用いて、球形または円筒面上を、例えば15°や30°間隔で測定する。測定周波数は6GHzの場合、通常1回の測定に3時間程度要する。測定速度を改善させるために、複数のプローブを用いた測定が提案されている。しかし、キャリブレーションに要する時間、プローブ間の相互作用の影響の問題を改善する必要がある。
測定速度やキャリブレーション、相互作用の課題を解決するため、ニアフィールド測定システムに新しい2つの技術「Fast Irregular Antenna Field Transformation Algorithm」(FIAFTA)と「スパイラルスキャン」を用いた測定を提案する。
従来は、一様な測定ポイントの結果であることが必須で、その結果をファーフィールドへ変換していた。FIAFTAは、任意の測定ポイントのニアフィールドの測定結果を、ファーフィールドに変換できる新たな数学的アルゴリズムである(図4)。
FIAFTAにより、球面に沿ってプローブとDUTを回転させ、スパイラル状に連続的に測定した結果を用いることが可能だ。これにより、測定時間を短縮できる(図5)。
センチ波/ミリ波帯では、受信した信号はケーブルを介してすぐに減衰してしまい、従来の方法による評価では高精度な測定の実施が困難となる場合がある。また、ビームフォーミングを搭載している場合が多く、量産試験でも任意の方向にビームが正確に出力されているかを評価することが必要だ。しかし、センチ波/ミリ波に対応した測定器はこれまで以上に扱いが複雑で高価なため、量産試験に不向きといわざるを得ない。
そこで、2つ目は、OTAパワーセンサー、広帯域ビバルディアンテナを用いたOTA評価ソリューションを提案する。同ソリューションは、複雑な系を組む必要がなく、高速で高精度な測定を実現する。量産試験における指向性の評価に掛かるコストを抑え、測定時間も短縮できるため、量産ラインでのスループットを向上できる(図6)。
なお、センチ波/ミリ波に対応した測定機器の開発だけでは不十分であり、効率的な測定・評価を可能にする新たな測定手法の構築が必要である。2020年の5G実用化を加速させるため、革新的なソリューションを継続的に開発、提案する予定だ。
【著:Taro Eichler(Rohde & Schwarz)/柳澤潔、中村浩士(ローデ・シュワルツ・ジャパン)】
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