低圧電源ラインの過渡パルスに対しては、保護回路が必要になることが多い。通常はクランプ回路を並列に挿入するのだが、場合によっては高電圧用の直列保護回路を用いる必要がある。
低圧電源ラインの過渡パルスの振幅は、公称電圧の何倍にもなることがあるため、保護回路が必要になることが多い。過電圧に過敏な回路を保護するには通常、クランプ回路を並列に挿入する。このクランプの高エネルギー吸収素子の前には、ヒューズなどの電流制限素子が置かれる。ヒューズのリセットや交換が困難であったり、近寄れない動作環境であったり、あるいは動作停止が許容されなかったりといった場合には、並列クランプに代えて、高電圧用の直列保護回路を用いる必要がある。
図1の回路は、電源に直列に挿入した高電圧nチャネルMOSFETパワースイッチQ1と高速の過電圧検出素子によって、電源ラインをオフにする。Q1と直列接続のダイオードD1が±500Vという高電圧の過渡パルスや持続的な過電圧から、負荷を保護する。この回路は、公称12Vの電源ラインの1Aという重い負荷を駆動するもので、通常はプラス側のスイッチドライバIC1がQ1を完全なオン状態にしている。D1とQ1を変更すれば、最大負荷電流を増やすこともできる。電源電圧の低下に対処するために、IC1には電圧低下ロックアウト機能があり、入力電源電圧が10Vより高い場合にのみ作動する。
この保護回路は、3個のトランジスタで構成され、通常時消費電流ゼロ、作動時間50nsの過電圧検出機能を持ち、入力電圧が約20Vに達すると、過電圧から保護する。Q4が、パワースイッチQ1のゲートをアースに落とし、Q1を完全にオフにする。過電圧がかかり始めると、まず、ツェナーダイオードD2がオンになり、端子電圧を約18Vにクランプして、IC1を保護するのである。D2を流れる電流が2.2kΩの抵抗に発生させた電圧よって、Q2、Q3、そしてQ4がオンになり、Q1のゲート容量の電荷を急速に放電し、Q1をオフにするという高速保護機能が実現する。
この回路が12Vで1Aの電源を供給しているときに、電源入力に150Vの過渡電圧がかかった場合の性能を図2に示す。過渡電圧源の内部インピーダンスは1Ω、立ち上がり時間は1μsである。正常動作時の消費電流は、電圧低下ロックアウト電圧検出抵抗による3μAと、IC1による17μAの計20μAである。なお、高温動作が必要な場合には、IC1のゲート電流出力が制限される。また、他の回路部品によるリーク電流にも十分注意を払う必要がある。
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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事から200本を厳選し、5つのカテゴリーに分けて収録した。
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