基板の部品面の写真を図3、ハンダ面を図4に示す。なお、写真にICの1ピンが分かるように赤い丸印を追記している。
図3の制御基板は懐かしい茶色のベークライト(以下、ベーク)を使った片面基板だった。現在は安全仕様が厳しくなり、燃えると有毒ガスを発するベークはあまり基板材に使わなくなった。30年ほど前に筆者が警報機器の量産製品を設計した時に、紙エポキシやベークの片面基板を使っていたことを思い出した。図3で基板の左側に白い配線がハンダ付けされているが、これはAC100Vの電源だ。右側の3個の3端子の部品はおそらくトライアックでACモーターを駆動しているものと思われた。図3の左下でわざわざ基板を切り欠いて抵抗が付けてあるが、この抵抗の実装方法に興味がわいた。
扇風機の制御ICの実装位置に「PT2124-F3N」とシルク表示されていたのでデータシートを調べた。PT2124という扇風機用の制御ICのデータシートは見つかったが「F3N」が何を意味しているのかは分からなかった。PT2124のデータシートに記載された応用回路例を図5に示すが、現物を見ながら赤文字と赤の記号で修正した。
まずは電源の入力抵抗だが、実装図から読める電源入力の抵抗は18kΩだった。またD2を図5に追加した。制御基板の消費電流は5mA程度だろう。S、M、L出力で扇風機の風量の表示と、T1、T2、T3のトライアックのゲートをコントロールしていた。なお扇風機のタイマーが最大4時間なのでTL4とSHO出力(首振り)のT4は実装されていない。クロックには水晶発振子が使用されており、時間精度が確保されていた。
図5の回路図で右側のトライアックの駆動を抵抗とLEDで行っており、非常にシンプルだった。この駆動方法は非常に分かりやすい。
制御ICのピン番号を確認したが、図5の回路図とは違っていた。図3、図4のハンダ面と部品面でICの1ピンの接続先を確認したところ、1ピンはTMRスイッチに接続されていた。回路図の図5では6ピンに接続されていた。恐らくこのICはこの基板専用にワイヤーボンドが変更されていると思われる。F3Nの型名は顧客仕様のIC型名を意味しているのだろう。
回路の接続が分かったのでとりあえず修理することにした。図3中央の電源スイッチ(ON/SPD)が動作しなかったので、押しボタンスイッチを押したらクリック感がなかった。マルチメーターでスイッチの端子の抵抗を測定したが、電源オンスイッチ(中央のON/SPD SW)を押してもオンせず、やはりスイッチが故障していた。
代替スイッチは同じ実装サイズの手持ちの押しボタンスイッチを使った。しかしボタンの高さが8mmと少し高かったので、ボタンの先端をニッパーで3mmほど切って、ヤスリで高さを調整して基板に取り付け、修理した基板を扇風機に戻した。
AC100Vを通電して電源スイッチを押したら、正常に電源が入り扇風機の羽が回転した。他の扇風機の動作を確認したが何も問題はなかった。スイッチ交換だけで扇風機が動作してしまったので廃棄するのはやめた。この夏もまた、この扇風機にはお世話になろう。
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