Bluetooth 5の特長について解説するシリーズの第2回。今回は、Bluetooth 4.2に比べて4倍という通信距離を実現できる仕組みについて解説します。
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米Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)が発表した論文によると、1990年代において、インターネットに接続していたデバイスの数はおおよそ10億個ありました。2000年代に入ると、スマートフォンの時代を迎え、この数は20億に跳ね上がります。米ABI Researchは、2021年までにはインターネットに接続するデバイスは480億個に達すると予想しています。それはまさに「IoT(モノのインターネット)の時代」と呼ぶにふさわしい状況だといえるでしょう。480億個のデバイスのうち、Bluetoothデバイスが占める割合は全体の30%と予測されています。
これは偶然の一致ではありません。Bluetooth Low Energy(以下、Bluetooth LE)は、IoTの主要な実現要因となるべく開発されてきました。Bluetooth 5はテクノロジー面で相当の前進を遂げ、IoTシナリオの幅を、さらに広げられる可能性を持っています。
実は、Bluetooth LEはバージョン4の段階で既に、一般に認識されている距離よりもさらにずっと広い通信距離をカバーしています。AndroidスマートフォンおよびBluetooth LE搭載MCUを使用した非公式テストでは、MCUから350mを超える距離にあるスマートフォンで通知を受けることに成功しました。このテストは、木々が生い茂り、多くの人が行き交っているような、無線通信にとって最適ではない環境で実施されています。市場に出回っている複数の市販のBluetoothモジュールもデータシートで500mの距離が通信可能であると表記しています。
Bluetooth 4.xは、低消費電力を維持しつつ、上記の通り十分に長い通信距離を備えているのに、Bluetooth 5で、その距離をさらに伸ばす理由はどこにあるのでしょうか。
より広範な通信距離が必要となる使用事例や、広い距離を確保することで優位性が増すという使用事例が数多くあります。スマートホームの分野がその1つで、Bluetooth 5の通信距離の拡大が目指している主要なゴールの1つでもあるのです。
さまざまなタイプのセンサーが壁面スペースや床下、屋根裏、窓、扉に設置されている部屋が幾つもある、大きな邸宅をイメージしてみてください。照明、暖房およびエアコンディショニングなどの設備が全てBluetoothを使ってコントロールされていると想定します。さらに範囲を広げ、屋外照明や庭、フェンス、門にセンサーが設置されている場合を考えてみましょう。これは、スマートホームのあるべき姿でもあります。スマートホームでは居住エリア、セキュリティ状態やエネルギー効率のモニタリングが可能であり、キーとなるシステムおよびデバイスによって自動または手動で制御できるようになっています。
省エネや利便性の点で優れるスマートホームですが、無線通信規格の観点では、大きな課題を突き付けます。家屋全体がその対象となるのは必須要件ですが、これを実現するための1つの方法は、内壁や外壁といった物理的障害物を何度も通過して信号強度が減衰した場合にも、直接通信を行うのに必要なデバイス間の対向(P2P/Point-to-Point)通信範囲を、十分に確保することです。
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