ファンを使用するに当たってはファンへの要求空冷能力を見積もらなければなりません。つまり、周囲温度が「○○℃」の時、機器内温度を「△△℃」から「□□℃」に下げたいのかを明確にすることが最初の計算になります。
熱が移動すること全体を指して熱伝達と言いますが、熱伝達には伝導、放射、対流の3要素があり、ファンによる冷却は、対流熱伝達に分類される熱の移動手段です。
空冷の原理は自然空冷であれ、強制空冷であれ、空気が温まって(熱量をもらって)移動する対流熱伝達です。つまり、空気がもらう熱量ΔQLは1式のように表せます。
具体的に毎秒当りで考えると、(J/秒)の熱量はW単位になるので、
2式からΔTと、PL(W)を運搬する風量Vについて3式を得ます。
この3式は自然対流でも同じです。自然対流では風速が0.1〜0.3m/秒と遅く、又開口部面積が風量を左右しますが、開口面積(m2)×流速(0.1〜0.3m/秒)が風量V(m3/秒)になります*2)。
しかし、機器内外の温度差ΔTが大きいと流速も高目になりΔTが小さいと流速も低めになるというある種の正帰還作用が働くので、実験データが蓄積され、予測ができるようになるまでは平均流速0.1m/秒で計算した方が良いでしょう。
一方、電力PLは電子機器では入力電力ではなく、損失であるので注意が必要になります。例えばPC用出力500W、効率80%、の電源の損失PLは次のように計算できます。
入力電力=出力/0.8=625W、 損失PLは入出力の差分なのでPL=625−500=125Wとなります。
*2)計算例:流速ν=0.1(m/秒)、ΔT=25K PL=10Wとすると必要開口面積Aは、
A×ν=A×0.1=PL/(1120×ΔT)=10/(1120×25)⇒A=0.00357(m2)=35.7(Cm2)
6cm×6cmの開口部が要求されますが経験的には妥当な値です。ただし、扁平(へんぺい)な形状の開口部では空気の粘性の影響が出るのでなるべく正方の形状が良いでしょう。
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