図6は、2000年に発売されたオペアンプ「OPA350」の周波数に対する閉ループ出力インピーダンスの曲線を示しています。
この図から、オペアンプのループゲインによって閉ループ出力インピーダンスがどの程度低下したのかが分かります。この場合、低周波数でのZoutは約1m〜100mΩの範囲内にあります。また、従来型の開ループゲインのプロットを反転させたような曲線の形状にも注目してください。Zoutについて学んだことを考慮すれば、意外な形状ではないはずです。最後に、図に示されている曲線は、1、10、100V/Vに相当する閉ループゲインの曲線です。閉ループゲインはβによって決まることから、このプロットはβの一般的な3つの値に対してZoutを定義していることになります。
データシートにZoutが記載されているオペアンプを回路設計で使用する場合は、モデルのZoではなくZoutを確認することが必要です。図7は、推奨されるテスト回路を示しています。
このテスト回路では、帰還抵抗RfおよびRiがオペアンプの周りのループを閉じ、Zoutの導出に使用したモデルに適合するテスト条件を作成します。前述したように、AC電流源Ioutはオペアンプ出力を逆駆動します。結果としてVoutに生じる電圧を測定することにより、式13に示すように、オームの法則を使用してZoutを特定できます。
Zoutをプロットするには、AC伝達関数を必要な周波数範囲で実行し、Voutの電圧をプロットします。シミュレーションソフトウェアでサポートされている場合は、RfとRiの値を段階的に変化させて、データシートの曲線に一致する閉ループ・ゲイン設定を作成することもできます。では、この回路を使用してOPA350のSPICEモデルのG=1、10、100V/VでのZoutをテストしてみましょう。
G=1V/Vの場合は、Rfを1mΩに等しい値(すなわち短絡)、Riを1Tに等しい値(すなわち開路)に設定します。この設定により、オペアンプは標準的なユニティ・ゲイン構成になります。G=10V/Vの場合は、Rf=10*Riになるように設定します。G=100V/Vの場合は、Rf=100*Riになるように設定します。
この場合も、モデルの出力インピーダンスは、低周波数での一部の小さな誤差を除けばデータシートの曲線に極めて厳密に一致しています。これらの低周波数での誤差は、Zoutの高周波数特性が支配的になることの多い小信号安定性分析では無視できます。この確認結果に基づき、安定性補償をこのシミュレーションモデルに適用すれば、実際の半導体製品の動作を示す優れた指標が確実に得られます。
Texas Instruments(テキサス・インスツルメンツ)高精度オペアンプ事業アプリケーション・エンジニア
【参考情報】
・ブログ(英語)
・“SPICEing Op Amp Stability”
・技術資料(英語)
・“Op Amp Stability Issues presentations by Tim Green and Collin Wells”
・“Modeling the output impedance of an op amp for stability analysis.”
・“Op amp stability and input capacitance.”
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