まず、ノイズ対策を全く行わない場合を図2に示す。
(a)、(b)ともに、中央に大きく発生しているノイズはA-Dコンバーターの変換動作により、マイコン自体が発生させているノイズとみられる。変換していない期間は、(a)の「安定化電源」の場合の方がノイズが多く、(b)の「単1形乾電池×2個」の場合では少ないことが分かる。ノイズのピーク電圧をチェックすると、(a)で137mV、(b)で147mV発生している(この時、「安定化電源」の電圧は3.003V、「単1形乾電池×2個」の電圧は3.23Vなので、「単1形乾電池×2個」の方が若干ノイズが大きいと考えられる)
例えば137mVはA-Dコンバーターの変換精度の187.01LSBに、147mVは200.704LSBに相当する。
同じ回路に、デカップリングコンデンサーを付けた場合を図3に示す。デカップリングコンデンサーの種類と容量値はマイコンのデータシートに記載されているスペックに従っている。
一目瞭然で、ノイズが激減していると分かる。外来ノイズはもとより、A-Dコンバーターの変換動作によってマイコン内部で発生していたノイズも減少している。しかし、それでも20mV程度のノイズは乗っている。これは約27.3LSBの誤差に相当する。
マイコンのデータシートには記載されていないが、参考として「安定化電源」使用時に電源にチョークコイル(100mH)を直列に挿入した場合を、図4に示す。この時、電源は「安定化電源」、デカップリングコンデンサーは、データシートに従った条件である。ノイズはさらに減って、13.6mV(18.6LSB相当)になっている。
【1】〜【3】より、デカップリングコンデンサーやチョークコイルは、ノイズ低減に効果があるのは確かだが、それでも18.6〜27.3LSB相当のノイズが発生する。データシートで保証されている誤差は最大4LSBの誤差なので、まだ4倍から7倍の誤差が発生していることになる。
詳しい測定は、次回に行うが、試しに【1】の条件でA-Dコンバーター変換を行ってみよう。「安定化電源」と「単1形乾電池×2個」の場合、デカップリングコンデンサーなし、電源電圧は約3V、1回だけA-Dコンバーター変換を行うという条件で、ADC_IN(被測定電圧)を0Vから約0.5V刻みで変化させた場合の最小値と最大値の変換結果を図5に示す。
(a)の「安定化電源」の場合にはA-DC_INが1.5V近辺で、最悪値が測定され、誤差は−51.78〜+35.22LSB(87LSB幅)になっている。(b)の「単1形乾電池×2個」の場合は、ADC_INが1.5V近辺と2.502V近辺で最悪値が測定され、−77.97〜+35.96LSB(113.93LSB幅)になっている。電源に乗っているノイズのレベルに比べれば、半分くらいの値だが、実用には耐えられない誤差値だ。
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