以前、あるユーザーから「平均化でノイズが減ることはない」と主張されたことがある。「何回測定しても毎回一定量(例えば5LSB)のノイズが発生するのだから、複数回測定して加算し、測定回数で割っても、結果は変わらない(5LSB×n÷n=5LSB)」という理屈だ。統計学的には難しい理論があると思うが、次のように考えると、理解しやすいのではないだろうか?
ノイズは乱数的に発生するので、1回目に発生したノイズによる誤差は2回目以降には存在しない、2回目に発生したノイズによる誤差は、2回目以外には存在しない(実際の変換誤差がプラスになったり、マイナスになったり、値が変化する)。以後、3回目、4回目と複数回繰り返す。一方、被測定電源の電圧は常に一定電圧が存在する(平均化しても、変化しない)。したがって、ノイズによる誤差を含んだ数値を平均化すると、各回に存在したノイズ誤差は、加算した回数分の1になるが、被測定電圧は本来の値が残る。したがって、平均化でノイズを除去できる。
これはあくまで私見だが、現実に実測値を平均化すると、ノイズの影響は減り、被測定電圧を求めることができる。
日系半導体メーカーにて、25年以上にわたりマイコンの設計業務に携わる。その後、STマイクロエレクトロニクスに入社し、現在までArm Cortex-Mプロセッサを搭載したSTM32ファミリの技術サポート業務に従事。Armマイコン以外にも精通しており、一般的な4ビットマイコンから32ビットマイコンまで幅広い知識を有する。業務の傍らマイコンに関する技術論文や記事の執筆を行っており、複雑な技術を誰にでも分かりやすい文章で解説することがモットー。
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