この修理品は、多くのスイッチが壊れており、倉庫での保管中にスイッチの動作不良を起こす腐食が進行していたと思われたので、スイッチを分解して内部を詳細に確認することにした。図4にスイッチの内部の様子を示す。
予想通りスイッチの銅板に緑錆が発生し、なおかつスイッチの内部が濡れていた。これはひどすぎる。保管条件が劣悪で他のスイッチも劣化が進んでいるだろう。この写真を顧客へ送って、正常に動作しているスイッチも交換するように顧客に提案したところ、「交換してほしい」の返事があった。
操作パネルの5個のスイッチを全て交換しインターロックのセンサーを仮接続して、AC200Vを通電した。電源表示が点灯しアラーム表示はなくなった。パネル基板は本体から分離して各スイッチの操作を行った。各スイッチのランプが点灯し正常に動作した。『これで修理は完了だろう』と思って、パネル基板を機器に取り付けて、顧客へ納品した。
翌日顧客から電話があり『電源を入れてスイッチを操作しても動作しない』という連絡だった。パネルのアラーム表示を確認依頼したら、アラームの表示は何も出ていなかった。『パネルを操作して確認したときは、正常に動作したのになぜだろう?』と首をかしげながら、修理品を返送してもらった。
返却された機器のインターロックを仮接続し、AC200Vを通電してスイッチ操作したが、確かにスイッチを押しても何も動作しない。電源を切り、パネル基板を機器から取り出し、再通電して単体で確認したらスイッチの操作で機器が動作した。パネル基板を機器に取り付けても動作しなかった。なぜ、このような動作不良になるだろう!?
ノイズの影響が受けていそうだと思い、パネル基板とケースの距離を広げてみることにした。
2mm厚のプラスティックスペーサーを入れて、パネル基板を取り付けて操作すると動作した。しかし、操作パネルとスイッチの間にも隙間があるので、スイッチをかなり強く押さないと操作ができない。やむを得ず操作スイッチの上にも厚さ2mmの透明スペーサーを貼り付けた。写真を図5に示す。
スペーサーの追加でスイッチの操作が可能になり、パネル基板を機器本体に取り付けても動作できるようになった。これ以上、修理するすべがないので納品してみると、顧客から「無事、動作できるようになった」と連絡があった。これで一連の修理は完了だ。
しかし、なぜパネル基板を機器に取り付けることで動作しなくなったのか? なぜ2mmのスペーサーを入れることで動作するようになったのだろう?
5V電源の改造に使ったDCDCコンバーターが非絶縁タイプだったので、ノイズを拾いやすい構造になった可能性が高い。電源のGNDとケースのFGが接触してスイッチの回路に大きなノイズが乗っている可能性もある。
CPU基板の回路図があれば本当の原因を明確にできるかもしれないが、回路図がない現状では対処療法しか実施できない。この機器の動作不良は今後も多発しそうだ。
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