かなり特殊な電源の修理依頼があった。ランプ用の電源だが設計/製造した電源メーカーが設備業界から撤退してしまい、電源の修理を依頼できなくなったということだった。現物を確認したら……『ブレーキがない自動車』のような危ない“暴走電源”だった。今回はこの“暴走電源”の修理例を報告する。
2013年末にかなり特殊な電源の修理依頼があった。ランプ用の電源だが設計/製造した電源メーカーが設備業界から撤退してしまい、電源の修理を依頼できなくなったということだった。かなり怪しそうだが、少なくとも「修理用の部品代は払う」ということだったので、確認のため現物を送ってもらった。現物を確認したら、回路的にもかなり怪しい電源だった。怪しいというよりも、『ブレーキがない自動車』のような“危ない電源”だった。今回はこの“危ない電源”の修理例を報告しよう。
依頼された電源を受け取ってまずは外観を確認した。外観チェックで気になる点が2つあった。図1と図2に示す。
図1は基板のハンダ面の写真で、基板が黒く焼けていた。図2はその部品面だが、なぜか部品の上をシリコーンで固めてあった。このシリコーンを外してみた。図3に示す。
図3でシリコーンの下にあった部品は黒く変色し青色のコンデンサには煤(すす)が付いていた。電子部品が燃えたのだろう。予想通りかなり危ない状況に陥ったようだ。
この電源基板にはトランスが3個あった。1個は焼損部の近くに使われているトランスで制御用のサブ電源をRCC回路で生成していた。2個目はパルストランスでメイントランスのトランジスタの制御用に使われ、3個目はメイントランスに使われていた。
電源全体の抵抗やコンデンサ、ダイオード、トランジスタを点検したら破損、劣化した部品が4個見つかった。図4に示す。
図4の左側の抵抗はAC電源入力用の抵抗で20Ω 5Wだが断線していた。次のトランジスタは図2の焼損部したRCC回路に使用されていたものだが、コレクタとエミッタ間が短絡していた。次の電解コンデンサはサブ電源の2次側の整流用の電解コンデンサでもともとは25V100uFだが、測定したら容量は33uFしかなかった。
破損した部品を交換するだけで通電したら危ないと感じたので、サブ電源の回路接続を確認し、焼損部分が含まれる電源部の回路図を書いた。図5に示す。
図5から分かるが、簡易な構成のRCC電源だった。×印が破損した部品で、破線で囲んだ部分の部品が黒く変色していた。しかし、電源の2次側からのフィードバックの回路が見つからない。現物を詳細に確認したがやはりなかった。これではブレーキがない自動車のようなものだ。暴走したら危険極まりない。今までいろいろな電源を修理したが、これほど危ない電源には初めて出会った。
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