交流はトランスで簡単に電圧を変更することができるので、送配電に適している。交流をそのまま使える身近な電気器具は、白熱電球や誘導電動機など限られたものになっている。多くの電気製品は交流を直流に変換して利用している。
用途 | 直流電圧 |
---|---|
デジタルICへの給電 | 1〜5V |
携帯電話、スマートフォン電池 | 3.8V |
USB直流給電 | 5V |
ACアダプター | 3〜24V |
LED照明用外部電源 | 6〜200V |
データセンター直流給電 | 12V、48V |
通信機器駆動用電源 | 48V |
自動車電源 | 12〜48V |
船舶直流給電 | 24V |
鉄道車両用補助直流電源 | 24V、100V |
航空機直流給電 | 14V、28V、270V |
HVDCバス給電(データセンターなど) | 300〜400V |
ハイブリッド車パワーユニット | 274〜650V |
電気自動車用急速充電器 | 360〜1000V |
直流電車給電 | 600〜1500V |
メガソーラー用パワーコンディショナー入力 | 600〜1500V |
直流高圧送電 | 125kV〜500kV |
表1:主な直流電源の利用と電圧 |
最近はハイブリッド自動車や電気自動車の開発が活発となり、高電圧で大電流を扱う用途が増えている。また、再生可能エネルギー分野では太陽光発電の普及が今後とも期待されている。
1960年代初頭に登場した初期のデジタルICであるRTL(Resistor Transistor Logic)やDTL(Diode-transistor logic)は12Vの電源で動作していたが、1960年代中ごろに登場したTTL(Transistor Transistor Logic)では5Vとなった。しばらくは5Vで動作するデジタルICが使われてきたが、その後、低電圧化が進んでいった。
製造プロセスの微細化高集積化によりデバイスのパフォーマンスは向上しているが、電源にとっては低電圧大電流となり、今まで以上の安定度が要求される。計測用電源においても半導体デバイスの低電圧化に伴い、安定度の高い電源が要求されている。
1960年代に乗用車に真空管式のAMラジオが搭載されたのが、本格的なカーエレクトロニクスの始まりである。2度のオイルショックにより石油価格が高騰して、燃費のよい自動車が求められるようになったため、1970年代後半には最適な燃焼制御を行うための電子制御回路を搭載した自動車が多く作られるようになった。
最近では快適で安全に運転ができるように、さまざまな電子機器が自動車に搭載されるようになっている。今後は自動運転など、より高度な制御を行うための電子機器の搭載がさらに増えると予測される。
エネルギーの有効利用の観点でハイブリッド自動車が普及し、駆動のためのモーターが自動車に組み込まれるようになった。これにより、直流電源に新たに大容量化の要求が生じた。
自動車は人を乗せて「安全」に移動できることが最も重要であるため、自動車に搭載された電子回路は誤動作を生じない保障が必要となる。自動車内の電源環境は、エンジンを始動するためのスターターモーター、ヘッドランプ、エアコンなどが起動したとき、供給電圧が大きく変動する。このため、自動車に搭載する電子機器は国際規格に従った電源環境試験が必要となっている。
地球温暖化対策のため、世界中で再生可能エネルギー利用の拡大は進んでいる。日本国内では太陽光発電が急速に普及した。今後とも環境、エネルギーへの関心の高まりにより市場が拡大すると期待されている。
太陽光発電では、太陽電池で得た直流を交流に変換するパワーコンディショナーが使われる。パワーコンディショナーを評価するためには、太陽電池を模擬する直流電源が必要となる。パワーコンディショナーは住宅用の小型のものからメガソーラーに使われる大型のものまであるため、利用される直流電源の容量や電圧はさまざまとなる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.