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セラミックキャパシター(1) ―― 原理、歴史などその概要中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(45)(1/3 ページ)

今回からはキャパシターの一種であるセラミックキャパシターについて説明をしていきます。セラミックキャパシターは誘電体にセラミックス、つまり磁器や陶器に類する無機材料を使用したキャパシターを言い、このことがよくも悪くもセラミックキャパシターを特徴付けています。本稿では、小型のセラミックキャパシターについて説明をしていきます。

» 2020年07月28日 10時00分 公開

 今回からはキャパシターの一種であるセラミックキャパシターについて説明をしていきます。セラミックキャパシターは誘電体にセラミックス、つまり磁器や陶器に類する無機材料を使用したキャパシターを言い、このことがよくも悪くもセラミックキャパシターを特徴付けています。
 セラミックキャパシターとしては表面実装用の積層形(MLCC)が有名ですがその他にも安全規格認定のノイズ抑制キャパシター(Yキャパ、あるいはYコン)として円板型セラミックキャパシターが多数使用されています。また大型の電力用セラミックパワーキャパシターもありますが本稿では現在の主力である小型のセラミックキャパシターについて説明をしていきます。

*)MLCC:Multilayer Ceramic Capacitor 多層セラミックキャパシター

セラミックキャパシターの概要

セラミックとセラミックス

 材料の教科書などに引用されている文献においては材料をセラミック、適用製品をセラミックスと呼び、それぞれが区分けされていました。しかし最近では両者の区別が曖昧であり、セラミックキャパシターに用いるようなファインセラミックスに相当するものを「セラミックス」と呼ぶようになってきていますので陶器、磁器などの構造系材料とは分けて考えられているようです。
 なお、ファインセラミックス(ニューセラミックス)とは一般に天然原料のものとは別に純度や粒度、粒径が高度に制御された微粉末を原料とするものを指し、その中でも特に産業的に有益な材料は時としてエンジニアリングセラミックスと呼ぶ時もあります。

注)多くの文献では「ceramic(セラミック)」と記載された場合は「陶器の」、「陶芸の」という意味として用いており、本稿で採り上げる部品カテゴリーとしての名称には複数形の「ceramics(セラミックス)」を用いるのが通常です。しかし、日本において両者は明確な使い分けがなされておらず本稿でも材料と製品を区別することなしに「セラミック」という表現とします。

キャパシターの原理

図1:キャパシターの原理図

 図1に示すように、2枚の電極をお互いに触れないように対向させると平板形キャパシターを構成できます。

 このキャパシターの容量値をCとすれば電気磁気学の諸式によって、

     ε0:真空の誘電率8.85418782×10-12(F/m)  εS:比誘電率

となリ、容量Cを上げようとすればdを小さくするか、Aやε(=ε0×εS)を大きくする必要があることは容易に分かリます。
 このεを大きくするには電極間に表1に示す誘電体と呼ばれる、εS≫1の特性を持つさまざまな絶縁物を挿入します。
 そして実際に電子部品用のキャパシターとしてこの各種の誘電体を用いたキャパシターが作られていて、その中でも誘電体にセラミックと呼ばれる無機材料を使用したものが今回取り上げるセラミックキャパシターです。

表1:各種キャパシターの分類

 表1を見るとセラミックキャパシターは次のような得失を持っていることが分かります。

  • 長所
  1. 高温で焼結した無機材料のモノリシック構造のため、信頼性が高い。
  2. 極性がない。
  3. 等価直列抵抗(ESR)が低く、高周波特性が優れている。
  4. 表面実装形積層タイプは、等価直列インダクタンス(ESL)が小さい。
  • 注意点
    • 主な材料が磁器(セラミックス)のため、機械的衝撃や熱的衝撃によってクラックが入る場合がある。
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