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セラミックキャパシター(1) ―― 原理、歴史などその概要中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(45)(3/3 ページ)

» 2020年07月28日 10時00分 公開
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IEC規格とEIA規格

 IEC規格とEIA規格には類似点があるものの相違点も多岐にわたり、これらの混同がトラブルの源になっていましたが2011年にEIAが標準化活動を停止し、2010年以降は国際規格のIEC規格に順次調和されてきています。この統一化に従って日本のJIS規格(日本産業規格)も順次IEC規格との調和が進められていますが、現在もEIAは活動を継続していていろいろな技術情報をIECに提供しています。

 本稿ではIEC規格の内容を主体に説明しますがEIA規格の実績も考慮してEIA規格での内容も参考として併記ますので互換性の判断の参考にしてください。

セラミックキャパシターの成分例

 冒頭で説明したようにセラミックキャパシターの誘電体はファインセラミックスと呼ばれる、制御された粒径と各種磁器成分で構成されています。特にクラス2の高誘電率系は誘電体の誘電率の温度依存性、つまり容量の温度特性が強く出てしまいます。そのため、主材の他に温度特性を改善して平坦(たん)化する目的で、温度特性のピーク点を制御するピークシフターと呼ばれる成分や温度特性のピークを平坦化するピーク抑制材も用いられています。
 規格化された温度特性を実現する成分比はいろいろな組み合わせがあり、そのような成分比の一例を表5に示します。この他にもさまざまな特性改善用の微量の添加材が用いられています。

表5:クラス2 高誘電率系誘電体の成分例

 アルミ電解コンデンサーに続いて今回も元素記号の列挙になりましたが実際にセラミックキャパシターを使う時にはこのような成分名は必要ありません。しかし、RoHS規制対応時の成分分析などではこの特性改善を目的にした多種の薬剤が検出されますので記憶には留めておいてください。
 なおZ5UやX7Rなどの名称についてはクラス別の特性説明の章で説明します。

 今回はセラミックキャパシターの概要について説明をしましたが主要材料が無機材料であることは他のキャパシターにはない特徴なので覚えておいてください。そして、後の章で説明するようにこのことが良くも悪くもセラミックキャパシターを特徴付けています。
 次回は今回に引き続いて構造の説明を行うとともに製造工程について説明をしたいと思います。


執筆者プロフィール

加藤 博二(かとう ひろじ)

1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。


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