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セラミックキャパシター(3) ―― 特徴と構造、製造工程中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(47)(1/2 ページ)

セラミックキャパシターの特徴や構造の説明を行うとともに製造工程を中心に説明をしていきます。

» 2020年09月28日 15時00分 公開

 前回はセラミックキャパシターの要(かなめ)である誘電体について説明をしました。誘電体の特性として同一の電界中に空間と誘電体が存在すると空間部の電界強度が誘電体の比誘電率εrに応じて強くなること、したがって高電圧を絶縁するには微小ボイドの存在に細心の注意を払わなければならないことがお分かりいただけたかと思います。
 今回は第1回の続きとしてセラミックキャパシターの特徴や構造の説明を行うとともに製造工程を中心に説明をしていきます。

各種キャパシターの特徴と用途

 現況では1品種で全ての用途を満たす誘電体はまだ開発されていませんので表1の分類表に示すように使用材料は用途や特長に合わせてそれぞれ専用に調合され、各社から各種シリーズとして発売されています。目的とする用途や特長に合わせて選択をしてください。

表1:セラミックキャパシターの形状分類
用途 MLCC 円板形 特長 主な用途・使用回路
一般用 ・寸法精度が良好
・等価直列抵抗(ESR)が小さい
・許容リプル電流が大きい
・小形大容量
・Q値が高く、温度に対し安定性がある。(種類1)
・デジタル回路/一般電子機器全般
・共振回路/回路の温度補償用(種類1)
・バイパス回路、カップリング回路(種類2)
・平滑用(大容量形)
高周波用 ・低L成分、高周波で高いQ値 ・高周波回路(VCO、TCXOなど)
低損失用 ・低ひずみ ・AV関連機器などの信号回路
・アナログ信号のカップリング回路
・携帯電話のPLL回路
・スイッチング電源のスナバ回路/インバーター
・時定数回路、発振回路、フィルター回路、など
アレイ形 ・実装の高密度/効率化 ・高密度電子回路用
中高圧用 ・高耐電圧で、小形
(沿面距離必要)
・高電圧回路
・電話/電話交換機/モデムのリンガー回路
・無線、通信基地局
EMC用
(安全規格認定品)
・安全規格の認定を取得
・電気用品安全法に準拠
・アンテナカップリング用
・ACラインでのX、Yキャパシター
高周波用
EMC対策用
貫通形 ・高周波ノイズ吸収性に優れる
・高周波で低ESLです。
・自己共振周波数が高い
・リード付:ETチューナー、BSチューナー、RFモジュールなど
・リードレス:RFコネクター
*)MLCC:Multilayer Ceramic Capacitor 多層セラミックキャパシター。リフローはんだ用とフローはんだ用があります。

 表1に示すセラミックキャパシターの中で現在の生産主力はもちろん面実装用角形積層(MLCC)タイプです。少し古いデータになりますが全世界では2010年のチタン酸バリウム系高誘電率のMLCCで年間約1兆個(1012)が生産されていました。現在での需要予測では2019年にMLCC全体で3兆個、年商1兆8000億円を超えるとも言われています。
 一方、国内生産実績は政府統計(e-Stat)で2019年にセラミックキャパシター全体で1兆個、5200億円となっています。

 この他にもパワーキャパシターと呼ばれる高電圧、かつ大容量のタイプにはドアノブ形と称される形状や大形円板形状、ポッド形と呼ばれる形状があり、用途や使用箇所に合わせて定格や形状が最適化されていますがカタログ商品ではありませんのでここでは名称のみに留めます。

セラミックキャパシターの構造

 表1で紹介した形状も含めて汎用的に用いられているセラミックキャパシターの外観と内部構造の概要を表2に記します。いずれも一般の電子機器の中では見慣れた形状です。

表2:外観と内部構造の概要 (クリックで拡大)

 表2(e)の円筒形部品はセラミック製円筒の内外に電極を設けたもので特にリード線のない表面実装用部品をMELF(Metal Electrodes Face Bonding)品と言い、カラーコードを表示できるので一時期は表面実装用の部品として採用されていましたが現在ではその多くがMLCC形に置き換えられています。
 また貫通形については別途、ノイズ対策用途の項で説明したいと思います。

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