今回は、そもそもですが、誘電体とは何かについて説明します。
電極間に挿入して静電容量や内部電界を制御する絶縁体を誘電体と呼びます。絶縁物ですから両端に電圧を印加しても電流は流れませんし、電気的に中性ですから電界がなければ電荷に偏りはありません。
しかし、誘電体に外部から電界を印加すると誘電体中の電子軌道や可動性を持つイオンではその位置が、またある種の分子では向きが変わることがあります。
その結果として物質の中の電荷の位置に偏りが生じ、物体表面に電界に応じた電荷が集まってきます。この現象を誘電分極と言い、表面に誘起される電荷の極性は図1に示すように外部の電界を緩和する方向です。比誘電率εrとはこの誘電分極の生成に関するもので、分極がない場合はεr=1です。
誘電体の説明に欠かせない電界という用語ですが、電極間に電圧(=電位差)が存在する場合に電極間の空間に電界が存在すると言います。基本的には抵抗体などの物質内部にも電界は存在することになりますが一般には絶縁体や遮断状態の半導体の内部など、電流が無視できて電位差のみを対象にする場合に電界、あるいは電場という用語を使います。
誘電体の性質として欠かせない特性が比誘電率εrです。その定義は誘電体中の電束密度Dが真空中の何倍になるか、つまり電束Ψ*1の吸い込みやすさを示すパラメーターです。イメージ的には図2に示すように、誘電体の中では空間(≒真空)に対してεr倍された電束密度になっているということです。別の見方をすれば誘電体の中では電極面積がεr倍されたのと等価とも言えます。
なお電気磁気学的にはε0を真空の誘電率としてD=ε・Eで誘電率ε(=ε0・εr)を定義した時、εrは電束密度D(C/m2)と電界強度E(V/m)*2の間を取り持つパラメーターの1要素です。
*1)電束:電荷1クーロン当たり1本出る架空の線で、単位は〔C:クーロン〕です。
*2)電界強度:単位長当たりの電位差(V/m)であり、絶縁物の絶縁破壊などのパラメーターです。
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