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マイコンで実現!実践AIソリューション〜「組み込みAI」の復習とプロジェクトの概要ハイレベルマイコン講座 【組み込みAI実践編】(1)(1/3 ページ)

すでにマイコンを使い込まれている上級者向けの技術解説の連載「ハイレベルマイコン講座」。今回は、実際にSTマイクロエレクトロニクスの32ビットマイコン「STM32F746」を使って、文字認識のAIプロジェクトを実行してみる。連載1回目の今回は、まず「組み込みAI」について復習した後、今回行うAIプロジェクトの概要を説明する。

» 2020年09月29日 11時00分 公開

 本記事は、2019年4月に公開した「ハイレベルマイコン講座【組み込みAI編】(1):マイコンで実現するAI ――「組み込みAI」とは」および2019年5月に公開した「ハイレベルマイコン講座【組み込みAI編】(2):マイコンでAIを実現するための手順」の続編である。

 前記事では「AIとは何か?」から始めて、「組み込みAI」実現のステップと各ステップの詳細について解説した。今回は、実際にSTマイクロエレクトロニクスの32ビットマイコン「STM32F746」を使って、文字認識のAIプロジェクトを実行してみる。

 連載1回目(今回)では、「組み込みAI」について復習した後、今回行うAIプロジェクトの概要を説明する。また、使用するハードウェア、ソフトウェアおよび統合開発環境(IDE:Integrated Development Environment)を説明する。

 連載2回目では、AIプロジェクトの構成を説明し、さらに各構成要素について詳しく解説。連載3回目では、実際にAIプロジェクトを実行してみて、各実行ステップを具体的に解説し、最終的に文字認識の結果を確認する。さらに、認識が難しいパターンを入力してみて、AIがどのような判別をするか実験する。

「組み込みAI」の復習

1. そもそもAIとは何か?

 AI(人工知能)の「知能」とは「物事を理解したり判断したりする力」である。すなわち、状況を理解し、さらに判断して、マイコンにプログラムするルールを作り出すことができなければ「知能」とはいえない。

 マイコンに一定のルールをプログラムして、ある情報を入力すると決められたルールに従った情報を出力するものをAIと呼んでいる場合も見受けられるが、これでは「知能」とはいえないだろう。

2. 「組み込みAI」とは何か?

 汎用マイコンの能力では、人工ニューラルネットワークを使ってディープラーニング(深層学習)を行い、推論アルゴリズムを構築することはできない。そこで、推論アルゴリズムの構築までをPCなど他のコンピュータ上で行うか、クラウドに用意されたサービスを利用しなくてはならない。そして、得られたAIの推論アルゴリズムのみを組み込みアプリケーションに入れ込んだものが「組み込みAI」である(図1)

図1:組み込みAIの実現ステップ

 「組み込みAI」では、AIの推論アルゴリズムの構築はできないが、実行は可能だ。例えば、「センサーデータからの特定波形パターンの認識」や「低解像度の静止画認識」「低解像度、低フレームレートの動画認識」「音データからの状況認識」「音声から特定のキーワードを認識」などである。このように、組み込み機器への入力信号/データについての判断や理解は可能なのだ。そこで、推論アルゴリズムの構築まではPCなど他のコンピュータ上で行う、またはクラウドに用意されたサービスを利用し、得られた推論アルゴリズムをマイコンにプログラムとして書き込み、実行する。

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