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知っておきたい「O-RAN」の機能分割とテストの課題5Gで変わる無線アクセスネットワーク(1/3 ページ)

5G(第5世代移動通信)における無線アクセスネットワーク(RAN)の変革と仮想化は、オープン化されたRAN(Open RAN)によって可能となる。ネットワーク事業者に大きなチャンスをもたらす一方で、テストエンジニアには新たな課題も生じ、また無線エンジニアはOpen RANに関して多くの疑問を抱えている。本稿では、無線通信業界でOpen RANが必要とされる理由、機能の仕組み、そしてどのような課題があるのかを説明する。

» 2021年01月22日 11時00分 公開

5Gを変えるOpen RAN

 5G(第5世代移動通信)における無線アクセスネットワーク(RAN)の変革と仮想化は、オープン化されたRAN(Open RAN)によって可能となる。ネットワーク事業者に大きなチャンスをもたらす一方で、テストエンジニアには新たな課題も生じ、また無線エンジニアはOpen RANに関して多くの疑問を抱えている。本稿では、無線通信業界でOpen RANが必要とされる理由、機能の仕組み、そしてどのような課題があるのかを説明する。

 まず、Open RANの中でも、特に「O-RAN」について定義しておこう。O-RANは、それ自体が技術ではない。物理的な専用ハードウェアから仮想クラウドベースのソフトウェア実装への移行を望むグローバル通信事業者5社が、2018年2月に結成した事業者主導のアライアンス「O-RAN Alliance」を指す。

 O-RAN Allianceが、ディスクリート部品を指定し、インタフェースを標準化することによって、ホワイトボックスハードウェア上でのホスティングが可能になり、事業者は多数のベンダーと連携できるようになる。また、電子機器受託生産メーカー、GPU/FPGAメーカー、さらには仮想クラウドインフラのプロバイダーと直接連携することも可能になる。事業者はO-RANにより、コンポーネントを組み合わせ、専門家と協力して独自のソリューションを作成できる。

 O-RAN Allianceは、無線ユニット(O-RU)、分散ユニット(O-DU)、集中ユニット(O-CU)を含むRANコンポーネント間の仕様、参照アーキテクチャおよびインタフェースを提供する。図1に示すように、この組織は9つのワーキンググループ(WG)から構成されており、それぞれがシステムの特定の領域に焦点を当てている。

図1:O-RAN Allianceのワーキンググループ 出典:O-RAN Alliance(クリックで拡大)

 この2年間で会員数は飛躍的に増加しており、現在、O-RAN Allianceには移動体通信事業者24社と、ネットワーク機器メーカー(NEM)、チップセットメーカー、スタックや無線エレメントを製造する企業など148社が参加している。O-RAN Allianceの会員リストはこちらのWebサイトで確認できる。

なぜO-RANが必要なのか

 O-RANを定義したところで、次に業界がO-RANを必要とする理由を考えてみよう。

 答えは簡単だ。「5Gでデータ量が増えるため、RANインフラストラクチャのフロントホール部分に大きな負担が発生するから」だ。

 4G LTEでは、集中型ベースバンドユニット(BBU)がCPRI(Common Public Radio Interface)インタフェースを介してリモート・ラジオ・ヘッド(RRH)に接続されている。その際、総帯域幅とアンテナが必要とするBBUとRRH間のデータレートは十分に確保されていた。だが、5Gではより多くのデータを伝送させる必要がある。スループットを向上させるためにMassive MIMOを使用すると、より広い帯域幅とより多くのアンテナポートが必要になる。

 この5Gフロントホールの課題に対処するために、上位レベルスプリット(HLS)と下位レベルスプリット(LLS)の2つのソリューションが考案された。O-RANにはHLSとLLSの両方が取り込まれ、インタフェースは標準化されている。通信事業者は、CU、DU、またはRUにそれぞれ異なるベンダーを利用することが可能になる。コンポーネントは相互運用性がより高く、プロトコルは明確に定義されている。

図2:RANがO-RANへと進化していく様子 出典:Keysight Technologies(クリックで拡大)

 それでも、5Gによって、フロントホールでの帯域幅は爆発的に増加する。LTEチャネルの帯域幅は通常、10MHzまたは20MHzしかない。BBUとRRH間のCPRIインタフェースでは、帯域幅とMIMOチャネルの数に応じて、600Mビット/秒(bps)〜10Gbpsの範囲の回線速度になる。単一の10MHz帯域幅チャネルでは回線速度が614Mbpsになり、8個の10MHzチャネルでは約5Gbps、10個の20MHzチャネルでは10Gbpsをわずかに超える。CPRIはこうした要件に簡単に対応することができるため、LTEではBBUとRRH間にこのインタフェースがよく用いられている。

 しかし、5Gでは状況が大きく異なる。多くの場合、帯域幅が100MHz以上になり、アンテナの数が8本に増え、RUとBU間の回線速度は28Gbpsの範囲に変わる。500MHzなどのより大きな帯域幅では、140Gbpsを超えることになる。このような帯域幅では、Massive MIMOによって回線速度が2Tbpsに増加する。CPRI上での2Tbpsのトラフィックは、まず実行不可能だ。この問題を解決するのが、機能分割である。

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