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マイコン製品における出荷テストとはハイレベルマイコン講座【出荷テスト編】(1)(1/4 ページ)

マイコンの出荷テストについて2回に分けて詳しく解説する。1回目の本記事では、はじめに「マイコンの故障の定義」「故障モード」、次に製造工程のどのステップでテストが行われているかを説明するために「製造工程(製造フロー)」について説明する。そして最後に「基本的なテストの種類」について概要を説明する。

» 2021年02月03日 11時00分 公開

 時折、ユーザーからマイコン製品の出荷テストについて質問されることがある。車載(自動車)向けマイコンでは信頼性を確認するために、NDA(Non-Disclosure Agreement:機密保持契約)を締結した上で、製造ラインの詳細情報を必ず提出するのだが、その詳細情報の中には出荷テストの項目が含まれている。また、汎用マイコンでも、採用前の検討段階で出荷テストの内容をチェックし、信頼性を確認するユーザーも多い。

 本記事では、マイコンの出荷テストについて2回に分けて詳しく解説する。

 1回目の本記事では、はじめに「マイコンの故障の定義」「故障モード」、次に製造工程のどのステップでテストが行われているかを説明するために「製造工程(製造フロー)」について説明する。そして最後に「基本的なテストの種類」について概要を説明する。

 2回目では、1回目で説明する「基本的なテストの種類」について、具体的なテスト方法を解説する。

 マイコンの出荷テストの具体的な項目や内容はマイコンメーカーの極秘情報なので、公開することができない。また、マイコンメーカーやマイコンごとにさまざまな手法や専門用語が使われているため、用語を統一して一概に説明することもできない。

 そこで、本記事では一般的なテスト項目と内容を分かりやすく解説する。専門用語についても、理解しやすい言葉を選んで解説する。

 なお、ストレスを印加することで初期故障を取り除くための工程(バーンイン[=Burn in]やエージング[=Aging]などと呼ばれる)を出荷テストの際に行う場合もあるが、こちらはテストではなく信頼性向上に関する工程なので、本記事では言及しない。

マイコンの故障の定義

 マイコンの不具合には次のようなものがある。

  1. 仕様の誤りによる不具合
  2. 設計上の誤りによる不具合
  3. 製造工程においてマイコン内に生ずる不具合
  4. 信頼性に関する不具合

 1と2は、マイコンの製品企画から設計開発までの工程で発生する人為的な不具合なので、故障とは呼ばない。マイコンが製品に組み込まれ、稼働してから発見される仕様のミスや設計ミスもあるが、これらも故障ではないため、出荷テストの対象外である。

 一方で、製造工程で生じた不具合や、出荷後の信頼性に関する不具合(上記3、4)は故障と呼ばれる。例えば、ウエハーの製造工程で異物(パーティクルとも呼ばれる)がマイコンチップ上に付着したまま製品化されると、異物起因でマイコンが正常に動作しなくなる。このような場合は故障と呼ばれる。また、メタルの配線幅が規定よりも狭く出来上がっていて、出荷時には正常に動作したが、稼働中のストレスにより断線する場合など、出荷後の初期段階で起こる異常動作もある。こちらについても、マイコン内部の潜在的な欠陥が稼働後に顕在化した不具合なので、故障と呼ばれる。

 出荷テストの対象は、このように製造工程で生じる故障や信頼性に関する故障であり、仕様上もしくは設計上の誤りは直接対象にしない。

 ここで「直接対象にしない」と書いたのは、出荷テストで設計上の誤りが見つかる場合もあるからだ。量産を開始すると、試作段階よりもパラメーターがばらついた製品ができることがある。その際に、パラメータのバラツキによって、潜在化していた設計ミスが顕在化する場合が稀にあり、一般的に、「内部のダイナミックバスのチャージ/ディスチャージ時間のバラツキ」や「信号のレーシング*1)」による不具合が知られている。

*1)2つ以上の信号の変化のタイミングがずれて、誤動作が生じる可能性のある信号競争状態を指す。例えば、2つ以上の入力がほぼ同時に変化すると、セットアップ/ホールド時間が確保されず、次段の論理ゲートから期待した出力が得られずに誤動作になることがある。

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