連載最終回は、スペクトラムアナライザーの周辺機器や利用事例、校正について解説する。
本記事は、計測器専門の情報サイト「TechEyesOnline」から転載しています。
スペクトラムアナライザーと組合せて使われる周辺機器がある。これらをうまく使えば効率のよい測定環境を構築できる。
スペクトラムアナライザー本体の感度では測定できないような微弱な信号を観測する場合は、外部にプリアンプ(前置増幅器)を接続して信号を増幅して観測することがある。スペクトラムアナライザーとは別に独立したプリアンプを用意する場合と、本体のオプションとしてスペクトラムアナライザーの内部に組み込む場合がある。最近の製品は本体にプリアンプを組み込むものが多い。ノイズや妨害波の探知をする場合は、プリアンプがあると微弱な信号まで観測できるため便利である。プリアンプを使う際には、規定された最大入力電力を超えないよう注意が必要である。
次世代の無線通信の研究やレーダーの設計では30G〜300GHzのミリ波の信号を取り扱うため、スペクトラムアナライザーの前に周波数を変換するダウンコンバーターが必要となる。ダウンコンバーターによって低い周波数に変換された信号をスペクトラムアナライザーで観測する。従来のダウンコンバーターは外部ミキサーと発振器が必要となり取り扱いが難しかったが、最近では取り扱いがしやすい一体型のダウンコンバーターが販売されている。
スペクトラムアナライザーとトラッキングジェネレーターを組み合わせて使うと、電子部品などの振幅周波数特性を測定することができる。ただし、ベクトルネットワークアナライザーのような位相を含めた部品の特性を測定することはできない。
最近はトラッキングジェネレーターが、スペクトラムアナライザー本体のオプションとして販売されている。無線設備などの保守点検作業でフィルターの特性を確認するときは、トラッキングジェネレーターが内蔵されたポータブルスペクトラムアナライザーが使われる。
電波環境を観測する場合は、スペクトラムアナライザーに測定用アンテナを取り付けて使う。測定用アンテナは周波数範囲が決まっており、アンテナファクタ(アンテナ係数)が校正によって定義されている。アンテナファクタは、アンテナが置かれている位置における電界強度に対して、スペクトラムアナライザーの入力端子に生じる出力電圧との比のことである。
測定用アンテナにはダイポールアンテナ、バイコニカルアンテナ、ループアンテナ、ロッドアンテナ、対数周期アンテナがあり、利用する目的によって選択する。
屋外で電波環境の測定を行う場合は、プリアンプやGPSが一体となっているツールを組み合わせて使うと作業性は向上する。
スペクトラムアナライザーの内部には、基準となる温度補償された水晶発振器が標準で搭載されている。水晶発振器より高い周波数の安定度が必要な場合は、原子時計のルビジウム発振器のオプションを選択する。
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