修理の方法としては、3つ考えられる。1つは電源回路のシャントレギュレーターの抵抗を変更し、全体の電圧を少し上げる方法。2つ目は電源基板の電解コンデンサーを交換する方法。もう1つは6つの電源にコンデンサーを追加して容量とESRを補強する方法だ。特にESRを低くすれば、パワーモジュールのIGBTのゲートに流し込む電流を増やせるので、パワーアップには効果的だ。電源基板の写真を図3に示す。
図3左は電源基板の部品面だ。電解コンデンサーは接着剤で固定されている。図3右は電源基板のハンダ面で全体を覆うようにパワーモジュールが実装されている。電源基板のコンデンサーの交換にはパワーモジュールを外す必要がある。しかし多数のピンがあり、外すことでパワーモジュールが破損する可能性がある。このドライバーは現役で動作しており、もしも修理に失敗して動かなくなったら依頼者に大きな迷惑をかけることになる。
この不具合状況と納期を勘案して、一番安全な『6つの電源にコンデンサーを追加して、容量とESRを補強する方法』で修理することにした。基板の回路を調べて、補強すべき場所を探した。制御基板の写真を図4に示す。
図4左は電源基板からコネクターで制御基板に電源が供給されていて、端子上に赤文字で電圧とCOMを記載した。図4右は部品面の写真だ。運よくドライバーICが3つ実装されていた。
補強するコンデンサーをドライバーの電源に追加すればよい。コネクターに3個、3つのモーター駆動ICに対し2個の合計9個のセラミックコンデンサー(10μF容量)を追加した。図5に示す。
図5は補強用の茶色のコンデンサーを追加したものだ。追加後に各電源のリップルを測定すると0.1Vp-pに半減していた。またモーター駆動ICには6個のコンデンサーを追加したので十分なESRが得られるだろう。自信をもって依頼者へ送付した。
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