メディア

トルクが足りないモータードライバーの修理Wired, Weird(1/3 ページ)

取引先から紹介された会社からモータードライバーの修理を依頼された。不具合の症状は『高速回転は問題なく動作するが、低速回転で逆回転する。低速の正常回転数 0.66に対し現在は0.05』と非常に具体的だった。この症状からするとモーターのトルクが足りてないようだ。依頼者は現場で活躍している人なので、何とか依頼に応えたいと思い修理を引き受けた。

» 2021年12月16日 11時00分 公開
[山平豊(Rimos)EDN Japan]

⇒連載「Wired, Weird」バックナンバー

 取引先から紹介された会社からモータードライバーの修理を依頼された。不具合の症状は『高速回転は問題なく動作するが、低速回転で逆回転する。低速の正常回転数 0.66に対し現在は0.05』と非常に具体的だった。この症状からするとモーターのトルクが足りてないようだ。依頼者は現場で活躍している人なので、何とか依頼に応えたいと思い修理を引き受けた。現品の写真を図1に示す。

図1:制御電源に通電しエラー表示を確認[クリックで拡大]

 図1は制御電源にAC100Vを印加してアラーム履歴を確認したようすだ。「A16」の以外のエラーはなかった。「A16」はセンサーエラーの意味で、モーターを接続していないドライバー単体の状態では正常なエラーだ。現場ではエラー表示が点灯せずにモーターが逆回転していたようだ。

 推測するに故障原因は、低速回転時に逆回転パルスを受けているか、トルク不足の可能性が高い。

 電気的な原因としては、アナログとデジタル電源のノイズが多いか、パワーモジュールを駆動するドライバーの電源電圧が低いことが考えられた。依頼者にモーターの負荷状況を尋ねると、重い加工部品を搬送しているということだった。やはり、モーターのトルク不足が疑われる。修理品を開けて電源部を確認した。図2に示す。

図2:電源部[クリックで拡大]

 図2左は3相200V電源を整流し駆動電源を作るコンデンサーのユニットだ。特性を調べると容量は1847μFでESR(等価直列抵抗)は0.16Ωだった。330μF容量のコンデンサーが4個、270μFのコンデンサーが2個の構成で、容量は合計1860μFあり、コンデンサーの劣化はない。念のため3相電源の整流ダイオードとパワーモジュールの保護ダイオードのVF(順方向電圧)も確認したが問題なかった。残されたチェック箇所は制御電源なので、出力電圧とリップルを確認した。

制御電源 出力電圧
(測定値)
リップル電圧 電源の用途
5V電圧 5.00V 0.2Vp-p デジタルICの電源
12V電圧 12.04V 0.2Vp-p アナログ回路の電源

 特に5V回路のリップルが大きいようなので対策が必要だ。

 パワーモジュールの駆動電源(4回路)は、駆動電圧が16.90V、リップル電圧は0.2Vp-pだった。パワーモジュールの駆動電圧が少し足りないようだ。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

EDN 海外ネットワーク

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.