高分解能コンバーターを設計する際に考慮すべき、アナログフロントエンド(AFE)のポイントについて解説する。
高い精度が求められる設計には多くの課題が付き物で、最終的には部品の選択にも影響します。設計者は往々にして、”いいところだけを得たい”というジレンマに直面します。熟慮のうえでデバイスを選択して設計目標を達成しなければなりませんが、選んだデバイスが全ての要件を満たせるとは限りません。
例えば分解能を高めたコンバーターを設計する場合、負荷効果によるゲインエラーを防止するために、接続先のセンサーの出力インピーダンスをもとにアナログフロントエンド(AFE:Analog Front End/オペアンプや計装アンプ[INA]、プログラマブルゲインアンプ[PGA])を選択する必要があります。しかし同時に、コンバーターのサンプリング比とセトリング時間も考慮しなければなりません。この2つのパラメータも、オペアンプの選択に影響するからです。
低電力のユニティゲイン安定オペアンプには、求めるような帯域幅やスルーレートが欠けていて、そのためセトリング時間の値に誤差が出ます。16ビットまたは18ビットA-Dコンバーター(ADC)には、シグナルインテグリティを保つために、低ノイズのアナログフロントエンドが必要です。
表1に、一般的なセンサーの種類と、それに対応するアンプのプロセス技術および入力バイアス電流(Ib)の予測値を示します。
センサの種類 | 出力インピーダンス | アンプのテクノロジと対応するIb |
---|---|---|
pH計、煙感知器、生体センサ(血糖値測定器) | ギガオーム〜 テラオーム |
CMOS入力 ピコアンペア |
ガス検知部素子、ホール効果、受動型赤外線、超音波、圧電、フォトダイオード、電荷結合素子(CCD)、心電図、脳波図 | メガオーム〜 ギガオーム |
CMOS、JFET(接合型電界効果トランジスタ)入力 数十ピコアンペア |
歪みゲージ(ホイートストーン)、磁気およびコイル(ロゴスキー)、抵抗温度検出器 | 数百オーム〜 数十万オーム |
CMOS、JFET、バイポーラ |
表1:一般的なセンサの種類 |
インピーダンスが非常に高いセンサーに対して非常に低い入力バイアス電流を勧める理由は、Ibと入力インピーダンス(ソース抵抗)が互いに影響して生じるノイズとオフセット誤差に関係があります。ギガオームからテラオームのソースインピーダンスと接続するときは、CMOS入力のような入力バイアス電流が非常に低い種類のアンプを使う必要があります。その場合でも、非常に低いIbが大きく有利に働くのは室温のときのみということを忘れないでください。温度が上昇するにつれ、入力バイアスは指数関数的に増加し、温度が10℃上がるごとに倍増します。25℃で1pAのオペアンプは、125℃のときは約1nAになります。
他に、次の式で表されるショットノイズに起因する問題もあります。
In = √2qIb (1)
ここで、qは電荷(1.6×10−19C)、Ibは入力バイアス電流です。
言うまでもなく、ギガオームレベルのソースインピーダンスの場合、主要な問題は電流ノイズです。
入力電流ノイズは、問題の一部でしかありません。温度監視のような信号の動きが遅いアプリケーション、または医療用計測機器やオーディオなどの周波数帯が狭いアプリケーションは、1/f成分が総ノイズに大きく影響します。このような場合に適しているのがJFETです。JFETは、Ibがバイポーラ接合型トランジスタよりもずっと低く、同時にCMOSと比べて1/fノイズコーナーも低くなっています。
電子機器設計の他の問題でも全てそうですが、「場合による」というのが答えです。ソースインピーダンスが極めて高い場合は、電流ノイズが支配的になる可能性が高いでしょう。しかし、入力バイアス電流が非常に低いオペアンプを使う場合でも、あらゆるノイズ源を考慮する必要があります。
電圧ノイズは電流に対して(バイポーラのコレクタ電流か、CMOSのドレイン電流かに関係なく)、反比例します。電圧ノイズを低くするには、オペアンプに高い電流レベル(静止電流)を供給する必要がありますが、それは帯域幅の増加につながります。ゲイン帯域幅積(GBW)は式(2)で表されるからです。
gm/2πCc (2)
ここでgmは、バイポーラではIc/VT、CMOSでは√(2kIdW/L)になります。
ノイズは帯域幅にわたって積分されるため、低ノイズのアンプ(計装/プログラマブル/差動)は、帯域幅が制限される場合にのみ、メリットがあります。
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