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» 2022年07月08日 10時00分 公開

突入電流の検討方法Q&Aで学ぶマイコン講座(72)(2/3 ページ)

[STマイクロエレクトロニクス,EDN Japan]

突入電流とは

 電源を投入すると、瞬間的に大きな電流が流れます。これを突入電流または起動電流、始動電流、英語でインラッシュカレント(Inrush current)と呼びます。

 マイコンを使った回路の突入電流は、デカップリングコンデンサーなどの外付けコンデンサーに大きく影響を受けます。

 マイコン自体に起因する突入電流も存在しますが、さほど大きくありません。さらに、マイコン自体の突入電流は、ユーザー側で制御することができません。従って、突入電流を抑えるには、デカップリングコンデンサーなどの調整や、インダクタンス(コイル成分)挿入といった外付け回路の対策が必要です。

等価回路

 「Q&Aで学ぶマイコン講座(31)マイコン周辺回路設計テクニック――電源編」で示した回路から電気素子のみ書き出した回路(図3(a))を作り、そこから回路シミュレーションを行う等価回路(図3(b)(c))を作ります。

図3:等価回路の検討[クリックで拡大]

 回路シミュレーターを持っていない場合は、Webサイトから無償でダウンロードできるものもいくつかあります。説明書も一緒にダウンロードされますが、ユーザーのブログなどで特徴や使い方が詳しく解説されています。無償版でも、今回の突入電流シミュレーションのような簡単な回路構成であれば十分使えます。

 では、等価回路を作る手順を見てみましょう。

 回路を構成する要素は、電源、配線、シャント抵抗、デカップリングコンデンサー(100nF×5+10μF)、そしてマイコンです。この回路で、電気的特性に影響を与える要素は次のようになります。

  1. 電圧源
  2. 電源の出力インピーダンスの抵抗成分
  3. 配線の持つ抵抗成分(シャント抵抗を含む)
  4. 配線の持つインダクタンス(コイル成分)
  5. デカップリングコンデンサー(100nF×5+10μF)
  6. 配線の持つ寄生容量(コンデンサー成分)
  7. マイコン

 マイコン自体の持つコンデンサー成分は、突入電流に大きな影響を与えないので、7については無視します。また、「6.配線の持つ寄生容量(コンデンサー成分)」は、デカップリングコンデンサーに比べると非常に小さい値なので、これも無視します。「3.配線の持つ抵抗成分」もシャント抵抗に比べると非常に小さいので、ここではシャント抵抗だけを考慮します。

 従って、1〜5の要素を使って等価回路を構成すると図3(b)になります。

 次に、各電気素子の具体的な値を計算します。

  1. 電圧源:3.0V
  2. 電源の出力インピーダンスの抵抗成分:実測値は約1.6Ω*1)
  3. 配線の持つ抵抗成分(シャント抵抗を含む):シャント抵抗は0.6Ω
  4. 配線の持つインダクタンス(コイル成分):実際の配線長は約10cmで、太さは0.5mmくらいなので、8(nH/1cm)×10(cm)で80nHとします。*2)
  5. デカップリングコンデンサー:100nF×5+10μF=10.5uF

 これらを図3(b)の各電気素子に当てはめると図3(c)で示すシミュレーション回路になります。

*1)電源の出力インピーダンスの抵抗成分が分からない場合は、実測することをおすすめします。電源に比較的大きな電流を流して、発生する電圧降下(抵抗値×電流値)から計算できます。
 起電力がE(V)で、出力インピーダンスの抵抗成分がr(Ω)の電源の場合、まず無負荷状態で電圧を測ります。それがE(V)になります。次に抵抗R1を接続して電流がI1(A)流れたとします。また、抵抗R2を接続してI2(A)流れたとすると、r=(R2×I2−R1×I1)/(I1−I2)でrを求めることができます。r=(E−R1×I1)/I1でも求まりますが、2つの抵抗で測った方が高精度です。
 例えば、乾電池を実測した場合、E=1.5V、R1=2Ω、I1=0.625A、R2=3Ω、I2=0.441となったので、rは約0.4Ω(0.3967Ω)になります。

*2)配線の持つインダクタンス(コイル)成分は、実測するのが正確ですが、手間もかかります。そのため、筆者の場合は、太さが0.5mmくらいの配線であれば1cmあたり8(nH)で計算しています。

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